月澄む空に49

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「ネットのニュースで、武蔵野署にトミタエンタープライズの社長富田が捕まったって見てさ」
「あ、そうでしたか。俺らその前に警察出てきたんで」
 もうネットのニュースに流れてるんだ。
「大変だったね、痴漢の濡れ衣を着せようとした女って吉崎だろ? あれ、どう見ても良太ちゃんだろ? 被害にあったの」
「え、どうしてそんなことまで知ってるんですか?」
「や、SNSで拡散してるから。天野くんが恋人宣言したとかってのも」
「ええええええ!」
 やはり、と良太は絶句した。
「ああ、でもそっちは動画とかじゃないから、まあ、噂? みたいな感じだし、あれから富田さんのことでちょっと聞いて回ったら、あの人、かなりやばいことやってたりしてて、でも今回の事件につながる情報はなかったから、良太ちゃんに申し訳ないと思ってたんだ」
「とんでもない。吉崎ふみかの情報頂いて、非常に助かりました」
「うん、まあ、とにかく、よかったよ。富田までつかまって。これで撮影に支障がなくなったから、心置きなく仕事に精を出せるよね」
 藤堂に礼を言って電話を切ると、「誰だ?」と工藤が聞いてくる。
「あ、藤堂さんです。前に吉崎ふみかの情報を下さったんですよ。ネットで富田が捕まったってニュースをみたらしくて」
「富田のことなんかもういいから、お前はとにかく安め。明日は病院に行け。石川に連絡してある」
 エレベーターが七階に着くと、工藤はドアを開ける前に言った。
「え、でも、明日黒田さんと打ち合わせが」
「何時だ?」
「午後一ですけど」
「そっちは俺が行く」
「はい、じゃあ、お願いします」
 自分の仕事があるんじゃないのかよ。
 それが気にはなったが、何が何でも病院に行かせるつもりらしい工藤にこれ以上何を言っても無駄だと、良太は諦めた。
 さっき打たれたところならもう痛みもないが、確かに一連の事件のお陰で神経を擦り減らしていたことがストレスになっていたのだろう、精神的な疲労感を感じていた。
 猫のお世話をしてからざっとシャワーを浴び、そのままベッドに入ろうとした時、隣とのドアが開いた。
「どうしたんですか?」
「大丈夫か?」
 ひょっとして心配して来てくれたのかと良太は工藤を見た。
「全然大丈夫ですよ」
「前にも脳震盪起こしてるからな、一応検査するに越したことはない」
「はあ」
「もう寝ろ」
 そう言いつつ、工藤はベッドに歩み寄った。
「寝ますってば」
 毛布を被る良太の横に工藤はそのまま入ってきた。
「ついててやる」
 良太は思わず工藤を見た。
 心配してくれてるんだ。
「いいから寝ろ」
「はい、お休みなさい」
 目を閉じた良太に、工藤が言った。
「おい、その前に、あの煩いやつは解除しておけ」
「え、だって、あれがないと起きれないし」
 また眼を開けて良太は言い返す。
「解除しろ。俺が起こしてやる」
 良太はまた起き上がると、仕方なく枕もとの携帯を取って、アラームを解除した。
 見ると既に工藤は眼を閉じている。
 ま、いいか。
 良太は毛布に潜り込むと、リモコンで明かりを消した。

 


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