月澄む空に52

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 『検事六条渉』の撮影がない今日は、森村もオフにした。
 どうやら森村は加藤らと連絡を取っているようで、良太に、大丈夫かとラインが入っていた。
 ここのところ青山プロダクション専属のような『猫の手』だが、妨害工作の主犯も捕まったことで、フルで動いていた加藤らも休みを取れるだろう。
 檜山匠のガードは引き続き一人ついてもらっている。
 翌日の朝、小田が訪ねて来て、事件の概要を話してくれた。
「え、小宮山さん、ライトの落下事件も自供したんですか?」
 小田の話によると、どうせ誰かから耳にはいるだろうからと、自供したという。
 小宮山の場合、妻への慰謝料や子供の養育費などで借金がかさみ、取り立てに追われて富田から妨害工作の話を持ち掛けられて、金欲しさに引き受けたらしい。
 小宮山や須田、それに吉崎が実行犯だが、富田は彼らにやらせたことを自供したようだが、まずその動機が、目の上のたん瘤だった工藤にしっぺ返しをしてやろうとした、憂さ晴らしのつもりでやった、という呆れたものだった。
「憂さ晴らしで、万が一ライトを落として誰かが大怪我でもした日にはたまったもんじゃないですよね」
 良太が言うと、森村が思わずテーブルを拳で叩く。
「No way!」
「まあ、彼らは業界ではもう居場所はないだろうね」
 小田は二人を宥めるながら言うと、忙しいらしく次のアポが入っているからと事務所へ帰っていった。
「でもさ、吉崎ふみかもSNSであんな拡散したら、ほんともうこの業界では使ってもらえないよな」
 良太はあらためて口にした。
「あれはダメでしょ。ドラマじゃないんだから」
 頬杖をついたまま森村が強調した。
「いや、SNSって使い方謝るととんでもないよなって。受け取る側も取捨選択難しいけどさ」
「ただの噂なら時間が経てばって思うけど、ネットは残るからな」
 二人が顔を突き合わせて頷きあっているのを見て鈴木さんが笑う。
「二人とも大丈夫? 時間」
「うわ、もう出ないと」
 良太が立ち上がると森村も続いた。
 午後からはまたスタジオで撮影が入っている。
 森村が助手席に乗り込むと、良太はアクセルを踏んだ。
「そういえば工藤さん、ものすごく怒ってましたよね」
 ややあって森村が口を開いた。
「え? あの人は怒るのが仕事みたいなもんだから」
 良太は笑った。
「いえ、良太さんや天野さんが警察に連れていかれた時ですよ。撮影終わってみんな帰った後、良太さんたちが飲み行って、俺はもう帰る途中だったんだけど、加藤さんから良太さんが武蔵野署に連れていかれたって連絡あって、俺即車で引き返したんです。その間にちょうど工藤さんから連絡入って、良太さんが痴漢の濡れ衣着せられて警察連れていかれたって話したら、良太だと?! 富田のやろう、ただじゃおかないって、電話の向こうでメチャ怒って」
 森村は一気にその時のようすを話した。


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