「え、でも警察に来た時は……」
ほとんど工藤は口を聞かなかったので冷静そうに見えたが、実は怒りでいっぱいだったのだろうとは思っていた。
「巻き込まれたのが良太さんだって聞いて、工藤さん怒ってたんだと思うけど」
ぼそりと森村は付け足した。
森村に話したわけではないが、良太が工藤を思うほどは工藤は良太のことを思っていない関係なのだと、良太が考えていることを、森村は何となく気づいているようだ。
良太が考えているよりは工藤が良太のことを思ってくれているのであれば、それはそれで良太としては嬉しいのだが。
「工藤さん、実は結構熱いからさ、ライトが落ちてきた時ひとみさんのことを心配したみたいに、みんなのことを考えていると思うよ」
すると森村は「うーん、まあ、それはそうだと思いますけど」と少し不服そうだ。
「まあとにかく、一件落着で、撮影に身を入れられるからよかったよ」
「ですね」
スタジオに入ると、天野が早速良太を心配してやってきた。
「よかった。にしても無暗に良太さんを殴るとか、あいつ、今度会ったらぶん殴ってやる!」
それを聞くと良太は苦笑して、「まあまあ。口だけにしといてくださいよ」と天野を宥める。
「良太ちゃん、とんでもない目にあったんだって?」
天野を押しのけるようにひとみが言った。
「ええ、まあ、でも事態は収拾しましたから」
「ほんっとに、小宮山も何考えてるのよって! 奥さんや子供さんがかわいそうじゃない!」
するとわらわらと他の俳優陣も加わって、ひとしきり小宮山や吉崎、それに富田のことで沸いた。
「トミタエンタープライズの女の子も怒ってたって。弁護士が間に入って対応してたみたいだけど、お金も契約通りもらえそうにないみたいで」
訳知り顔で、どこで仕入れてきたのか岡林という女優が言うと、「かわいそうねえ。やっぱ事務所は選ばないとだわね」とよく近所の主婦役などでいろいろなドラマに顔を出している三島という女優が大きく頷いた。
「三島さんとこは大手だし、ちょっとやそっとじゃびくともしないでしょ」
ひとみが言うと、「でもさ、世の中何が起こるかわからないからね」と三島が返す。
「はーい、そろそろ撮影、行ってもいいですかあ?」
自分より年配の女性陣にはなかなか頭の上がらないところだが、山根が声を大にして宣言した。
千雪から良太の携帯に連絡が入ったのは、夕方、ちょうど弁当を配っていた時だった。
「何や、えらいめにおうたんやて?」
スタジオを出て廊下で電話に出ると千雪が聞いてきた。
千雪のところまで情報がいっているのかと思いつつ、「はあ、まあ」と良太はおざなりな返事をする。
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