翌日、午後四時頃、良太は千雪を迎えに大学の研究室まで出向いた。
「ええ? ちょっと何か今日は一段とみょうちきりんな色じゃないですか?」
研究室から出てきた千雪は、上下ジャージにいつものくたびれたスニーカー、ボサボサの髪に黒ぶちメガネといういで立ちだが、そのジャージの色がベージュと緑のボーダーの襟がついたくすんだ緑のジャケットにくすんだオレンジ系のズボン、さらに臙脂のスニーカーという組み合わせなのだ。
「いくらアートに疎い俺でも、その色の組み合わせはないでしょうが。ってか、そんなの一体どこで売ってるんです?」
「俺御用達のスーパーの衣料品コーナーにあるんや、これが」
千雪は嬉々として言う。
そして千雪をナビシートに乗せて着いたところは、麻布の千雪や京助のマンションの前だ。
良太は車をエントランスに横付けした。
「奇抜さを面白がってるのは分かりますが、ちょっと先生の威厳ってものがまるで感じられないんで、ご自宅寄ってジャケットくらいは着て来てください」
「何でやね。滅多にこないおもろい組み合わせはないんやで?」
「はいはい。ちょっとここに車置かせてもらって、ほら降りますよ」
良太は悦に入っていた千雪を急かして、マンションの中に入っていく。
「こんにちは、ダニー」
コンシェルジュというにはいささかごついアメリカ人のダニーは、良太を見て破顔した。
「おー、リョータ、こんにちは」
にこにこと挨拶を交わすダニーと良太を見て、「いつの間にか門番と慣れ合ってるし」と千雪がぼそりと呟いた。
「そりゃ、泊めて頂いたり何度もお迎えに上がってますから、仲良くもなりますよ」
しれっと言う良太を、千雪はフンと横目で見やる。
白いシャツに地味目なジャケットとズボンに着替えると、千雪はカバンだけは同じように横がけした。
「まあ、いいでしょう」
腕組みをして千雪の上から下まで目をやった良太に、「えらそうに」と人睨みする。
「ひとみさんが、今までになく真剣に撮影に向かってて、千雪さんの意見を聞きたいって言ってるんです」
ハンドルを切りながら良太は言った。
「さっきのみょうちきなコスプレで行ったら、ひとみさん笑っちゃって演技に身が入らないですよ」
「そうかあ? ひとみさんやったら、面白がってくれる思うけどな」
「だから、あの人、ツボると止まらないし、撮影の進行妨害になるでしょうが」
いつだったか、何が面白かったんだか忘れたが、アスカと一緒だったから余計に二人で笑いが止まらなくなって、周りが困ったことがあったのだ。
「妨害といえば、良太、痴漢にされそうになったとこ、誰が撮ったん? えらい、ええタイミングでSNS賑わしとったで?」
聞かれて良太は一瞬言葉に詰まる。
「あれ、加藤さんです。俺がボコられるとこまで撮らなくても、助けに入ってくれてもいいじゃないですか」
不服そうに言う良太に、「加藤さんか。まあ、念には念をちゅうやつやろ? ほんま、出まかせ言うとんのな、あの女」と千雪は笑う。
「せえけど、ボコられて、大丈夫やったんか?」
ようやく思いついたように千雪が聞いた。
「一昨日、病院で検査しましたよ。工藤さんが行けってうるさいし」
「そら、工藤さんにしてみたら、良太に何かあったらて、心配でしゃあないわな」
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