「よかった。一度ご意見伺いたいと思ってたんです。文句とかアドバイスとかありますか?」
天野はぱっと見は役柄の四ノ宮そのもののように大柄で重厚感があるが、本人はにこやかに見下ろした。
「天野さんがこうだろうと思うて動いたはるんが四ノ宮ですわ。文句なんかありませんよ」
聞きようによっては突き放した冷たい言い方だが、千雪としては言葉通りなのだろう。
何かもっと言葉を期待した天野にとっては物足りない思いのようだ。
「ちゃんと四ノ宮だって、さっきも千雪さんと話してたんですよ」
助け舟を出した良太に向き直り、天野はまたにっこり笑う。
「良太さんにそう言ってもらえると、ほっとしますけど」
ほんまに嬉しそうに笑うとるわ、千雪は天野を見て思った。
視線は良太一直線やんか。
「そうそう、新しい部屋、見つかりそうなんですよ」
「え、よかったじゃないですか。今度はセキュリティしっかりしてるとこですよね?」
「前にドラマで一緒になった久田公博が引っ越すっていうんですよ」
「そこに入れそう?」
久田公博といえば今アイドル俳優のトップスリーというところだ。
人気漫画の実写でかなりな興行成績をたたき出した主演映画は既に続編を撮っている。
「まあ、久保田は今人気沸騰で手狭になったみたいで」
「お友達なんですか?」
「いやいやいや、向こうが話し好きってだけで」
天野は強く否定する。
「家賃とか聞いたら、何とか払えそうだし、青山だし」
「まあでも、ちゃんと部屋見せてもらってからの方がいいですよ」
「ああ、そうですね」
その時ドアが開いて、工藤が入ってくるのに良太は気づいた。
「ちょっと失礼します」
二人に声をかけて良太は足早に工藤に歩み寄った。
「お疲れ様です」
「おう、どうだ? 撮影は」
「おおむね、スケジュール通りに進んでます」
その時工藤の視線を捉えたのはひとみだった。
「あら、高広、来てたんだ?」
それまで熱心に撮影された動画を見ていたひとみはたったか工藤の元へやってきた。
「明日、オフでしょ? 撮影終わったら飲みいこ」
「お前はオフでも俺は仕事だ」
「せっかく千雪ちゃんも来てるんだし、事件も収まったし、このあたりで息抜きしないと、みんな疲弊しちゃうわよ」
良太のことが気になって来てみればこれだ。
工藤は眉間の皺を深くする。
確かに、自分への恨みで起きた事件に制作スタッフともども巻き込んだともいえないこともなく、息抜きをさせてやるのもありかとは思うのだが。
「仕方ないな、良太、参加人数を確認して、どこか手配してくれ」
「わかりました」
良太はひとみに言われなくとも責任を感じているのだろう工藤の心中を察した。
「モリー、ちょっと」
森村を呼ぶと、人数の確認を頼み、良太は何やら話をしている千雪と天野のところに戻った。
「今、剣道の話をしてたんですよ」
良太の顔を見ると天野が言った。
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