「まあ、ちょっとお仕置きされたみたいだし、少しは懲りたんじゃないですか?」
良太にしても、周りのノリで手を出した連中には、ふざけんな、と思うのだが。
「ちゃんと罰受ければいいんですよ、そういう輩は」
頷いた天野は、ふと視線を感じて顔を上げた。
途端、工藤の険しい顔に出くわして、視線が交差する。
「ちょっと、聞いてるの? 高広!」
ひとみの甲高い声に、工藤は「何だ」と煩そうに言い返したが、今しがた目に入った天野の仕草が何となく気になっていた。
何だ、あいつ、馴れ馴れしい。
良太さん、良太さんと、やけに懐いていると思っていたが、睨み返すような天野の視線に出くわして、酔っているからというだけではない、良太の髪を触る天野の指が、別の意図を持っているように思われた。
春から良太と飲みに行ったりしていたらしいことは、工藤も良太から聞いていたが、ひょっとしてという疑念を抱いたのはたった今だ。
あいつ………。
十一時にはお開きにして店を出た一行は、それぞれタクシーを止めて乗り込んだ。
支払いを済ませた良太が最後に店を出ると、天野が待っていた。
「すみません、御馳走になってしまって」
「天野さん、これも経費ですから気にしないでください」
二人が肩を並べてやってくるのを、ちょうどひとみと須永を乗せたタクシーを見送った工藤が振り返った。
「おやあ、工藤さん、いよいよ良太に振られそう?」
工藤の横で千雪が揶揄する。
「何だ、まだいたのか。とっとと帰れ」
「それはないんちゃう? 顔出せ顔出せいうから、わざわざ来たったのに」
恩着せがましい千雪の言葉に、工藤の眉間の皺がまた増える。
「やから、もっと正直にならはったら? 良太のことメチャ大事なくせに」
「煩いんだよ、お前は」
工藤に対して小煩いのはひとみだと思っていたが、結構長い付き合いになるこの千雪にも動きを読まれているのが癇に障る。
千雪とは出会いからして工藤の方が四分六分で強く出られないところがあり、そんな工藤のことをまた良太が誤解している節はあるのだ。
だが、もとはと言えばと千雪のことを口にした日には、それこそもう良太に愛想をつかされるだろうと思うと、工藤は口が裂けても言えないのだった。
「お疲れ様です。タクシーつかまりませんか?」
良太は良太で、何やら千雪とこそこそ話している工藤が気になっていたので、たったか歩いてタクシーを止めた。
「どうぞ、千雪さん。今日はありがとうございました」
「おおきに、ほな、お先」
千雪はさっさとタクシーに乗り込んでドアを閉めた。
続いてもう一台タクシーを止めると、「天野さんもお気をつけて」と天野を乗せた。
「部屋落ち着いたら、また飲み行きましょうよ。引っ越し祝い」
「わかりました。決まるといいですね。お疲れ様です」
良太はそう言って天野を送り出すと、続けてやってきたタクシーに手を挙げた。
「先に乗れ」
工藤は良太を促すとたったか自分も乗り込んだ。
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