「また、意外な人と親しいんですね」
竹野は好き嫌いが別れる俳優だと言われている。
「いや、親しいっていうか、やっぱドラマで。竹野さん、本音で話すと面白い方ですよ」
一応竹野のために良太は弁明をしておいた方がいいだろうと思う。
「ふーん。とにかく、俺も、鍋パ声かけてください」
「え、はい、わかりました」
異様に天野に圧をかけられて、良太は頷いた。
「良太ちゃん、ちょっといいか?」
「はい」
その時助監督に呼ばれて足早に向かう良太の背中を天野はしばしぼおっと見送った。
「天野ちゃん」
背後からひとみに声を掛けられ、天野ははっとして振り返った。
「なーに? なんか悩みごと? よかったら聞くわよ?」
すると天野は苦笑いを浮かべた。
「まあ、何かと、ありますが、今は撮影に集中ですね」
天野の言葉に、ひとみは「わかった。じゃ、鍋パの時にね」と笑顔を見せる。
「舞台で鍛え上げられただけあって、やっぱ根性が違うわ。そう思わない? 須永ちゃん」
腕組みをしたままひとみはメイクを直されている天野を見つめ、コーヒーを持ってきた須永にこそっと言った。
「や、このドラマ、そんな人ばっかじゃないですか。まあ、早々にリタイアした小早川さんとかは難ありでしたけど」
須永に言われてあたりを見回したひとみは、なるほど、と頷いた。
「やあだ、たまには的を得たこと言うじゃない。ほんと、みんな、演劇畑出身の人ばっかだわ」
西野を筆頭にほんのちょい役から刑事役まで老舗の文化座や小劇団、アングラ劇団員などが占めている。
「今日の俳優陣、高広が怒鳴り倒したい人ってゼロだわ」
たまたまそれを聞きつけた良太は、「何ですか、その基準」と口を挟む。
だが、ひとみにその理由を説明されて、良太は「へえ、そうなんだ」と俳優たちの顔を見た。
確かに今日の撮影には、若手も劇団員だったりで、どこかの芸能事務所の駆け出し俳優や学芸会もどきのアイドルタレントはたまたま一人もいなかった。
だからリテイクも少ないし、撮影も深みがある内容になっているのかも知れないと、良太は今更ながらに思う。
まあ、ひとみは演劇畑の出身ではないが、舞台も何度も経験しているし、キャリアもあり実力も評価されている今や大御所俳優だ。
今回は座長として自分だけでなく、俳優陣全体に気を配っているのが良太にも伝わってくるから、少しでもひとみの力になれたらと良太も気を引き締めている。
「うわ、結構降ってるなあ」
助手席で森村が言った。
スタジオの駐車場を出ると雨は本降りになっていた。
それでもかろうじて日付変更線を超える前に会社に戻れそうだと、良太はハンドルを握る。
埠頭のロケだったよな、工藤。
うまく撮影が進めばいいけど、スケジュール推してそうだったから、下手すると雨ん中でもやってるぞ、これは。
良太は眉間の皺を濃くしているだろう工藤を思いやった。
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