プロ野球のペナントレースも終盤に差し掛かり、今年も関西タイガースはセリーグの首位と二位を行ったり来たりしている。
それだけでなく、Aクラスどころか三位以下も今年は混戦状態がまだ続いており、下手をすると終わったらガラリと順位が変わっていたなどということもあり得そうで、開幕を前に順位予想をしていた評論家たちも一喜一憂しているらしい。
二冠は確実視されている沢村だが、未だにスワローズの山本とホームラン王争いを続けており、良太は今日明日で、関西タイガースの取材のためにホームグラウンドのある甲子園へと向かうことになっている。
実はそれだけでなく、沢村から折り入って話があるからどこかで時間を取ってくれと言われていたのだが、なかなかスケジュールの都合がつかず、甲子園への取材に便乗してようやく良太は沢村と会う段取りをつけたのだ。
ただ、沢村が折り入って話したいなどと、一体何だろうと良太は身構えていた。
もしかするとまた佐々木と喧嘩でもしたのだろうかとも考えたのだが、先日佐々木オフィスの直子と話した時には、「実はやっと、佐々木ちゃんが沢村っちの土地に家建ててもいいってGOサインだしたのよ」と喜びマックスな雰囲気だったのだ。
「しかもその話を小耳に挟んだ先生が、何がでてくるかわからないような雑木林より、家を建てて住まう方がええに決まってます、とか言ったもんだから、佐々木ちゃんももう文句も言えなくなった感じ?」
何と、あの気難しさの権化のような佐々木の母親が後押ししたという。
とすると、沢村が元佐々木家の土地に家を建てるという望みはかないそうなわけだし、プラグインの藤堂情報によると、最近、たまにお忍びで? 佐々木さんも多忙な合間を縫って、沢村の試合を見るために北海道や九州へ出かけているみたいなので、二人のラブラブ度も増しているのだろうと良太は推測している。
じゃあいったい、沢村のあのあらたまりようは何なんだよ?!
何かドドーンと大きな問題が立ちはだかっているのではと良太は怪しまないではいられないのだ。
「良太ちゃん、オフィスイシカワからお電話です」
西宮に向かう準備をしていた良太は、鈴木さんの言葉に手を止めた。
オフィスイシカワは、中堅どころの人気俳優を数名抱えている芸能プロダクションで、今回「検事六条渉」のドラマに、要の容疑者役で出ている三枝みちるの所属事務所だ。
何だろう?
受話器を取る前に、良太はふと嫌な予感があった。
「はい、お電話変わりました。ああ、田代さん、お世話になっております」
オフィスイシカワの取締役でもある田代は三枝のマネージャーであり、アラフィフの温厚な人だ。
「え?」
だが思わず良太が絶句してしまったのは、淡々と告げる田代の話の内容が、そうですかでは終わらないものだったからだ。
「はい、はい、わかりました。いえ、わざわざお知らせありがとうございました。はい、よろしくお願いいたします」
電話を切った良太は、大きくため息をついたかと思うと、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
何かただならぬ様子にパソコンから目を上げた森村や鈴木さんが良太を見た。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
