吐き捨てるように言う沢村に、「らしくもなく、後ろ向き過ぎないか?」と良太は窘める。
「第一、佐々木さんとまだ話してないんだろ?」
「佐々木さんに話せるくらいならお前に話してない。話した途端、アウト間違いなし」
頭を振る沢村は堂々巡りの先が見えないラビリンスの中に入り込んでしまったようだ。
差しあたって良太にもこれといって何かいい解決案が沸き上がるわけもなく、二人はシャワーを使い、キングサイズのベッドが並ぶ寝室に入ってからはどちらともなくキッズチームで対戦した頃の話になり、わけもなく笑い、いつの間にか眠ってしまった。
翌日、沢村にJRの駅まで送ってもらった良太は新幹線の中でまた沢村と佐々木のことを考えているうちに東京に着いた。
「うーん、やっぱこれは俺だけで考えても埒が明かないって」
良太は誰か助っ人を頼むしかないとは思ったのだが、果たして誰にしたらいいか、また悩むのだった。
「いつかのハロウィンの時みたいに、何かいい解決策、ないもんかなあ」
いずれにせよ二人の未来にも関わることだし、気軽に話せるものではないことだけは確かだった。
「しかもタイムリミットあり!」
沢村にしてみれば、まるで死刑執行まで日一日と過ぎていく時を歩んでいるかのように思われるに違いない。
それでも試合は試合と、その表情とは裏腹に成績も落ちることなく臨んでいるのがせめてもの救いだろう。
「何かいい案、ないのかなあ」
デスクでぼんやり口にした良太の独り言を聞きつけて、「何の案だ?」と聞き返したのは珍しく朝からオフィスにいる工藤だった。
「え、あ、いや、こっちの話です」
良太は答えに窮して工藤を見た。
この人に相談しても、うーん、いい案とかはまず出ないよな。
そんなものは二人が決めることだとか何とか。
「何をきょどってるんだ、出かけるんじゃないのか?」
言われて良太ははっと壁の時計を見ると立ち上がった。
「いっけね」
早速昨日のカンサイタイガースの取材を踏まえて、『パワスポ』のミーティングが十一時から入っていた。
今年はWBCもあるので、いろいろとやるべきことがあるのだ。
「行ってまいります」
車に走り込むと良太はエンジンをかける。
「ちぇ、せっかく工藤がいたのに何も話してないや」
いい案が出ることはなくても、やはり話してみるべきだったかと、今更ながらに思いつつ、良太はハンドルを切った。
「そういえば、千雪さん、前、留学してたって言ってたよな。ちらっと向こうのこととか聞いてみようかな」
良太はほんの少し前に進める兆しが見えたような気がした。
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