月澄む空に99

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 ドラマ『検事六条渉』の進行の件で少し話したい、という名目で良太が小林千雪に連絡を取ったのは翌日のことだった。
 工藤は今日明日とMBCのドラマのロケで、大阪に出張である。
 工藤がいない日を選んでいる自分が健気な気がする良太だが、自分を憐れんでいる時間はなかった。
「フーン、ほな、うち来る? 今夜、京助モルグに籠る言うてたし」
 案外簡単に約束が取れたので、良太はスタジオ撮影が終わるのを待って、今日はそれぞれの車で来た森村にあとを頼み、良太は一足先に麻布へと車を走らせた。
 ちょうど八時を回った頃で、今から行くと連絡を入れると、一緒にご飯食べよう、という千雪の言葉に甘えることにして、良太は途中青山で手土産に美味しいプリンとワインを買った。
「うま! ほんとに京助さんって、料理だけは文句なしですよね」
 鍋ごと冷蔵庫に入れて行ったビーフシチューを良太が温めて器に盛りつけているうちに、千雪は最近通っているという美味しいパン屋のバゲットをカットした。
 キッチン横のテーブルで向かい合って夕食となったのだが、シチューの美味いこと。
「京助さん食べて行ったんですか?」
「慌てて食うとった」
「しかし、医者って相手が生きてても亡くなってても待ったなしなんですね」
「ほんまやな」
 車だからと良太がワインを控えていると、「泊ってったらええやん」などと千雪が言う。
「猫ちゃんら、ごはんまだなん?」
「いえ、スタジオから千雪さんとこ行くってオフィスに連絡入れたら、鈴木さんがご飯やってくれるって言ってましたけど」
 散歩に連れて行ってもらったしい千雪の愛犬シルビーは大きなふかふかの自分のベッドにひっくり返るようにして寝ていた。
「わんにゃんいるって、やっぱ和みますよね」
「せやなあ。俺かなりずぼらやけど、自分はどうでもこいつの世話だけはやるもんなあ」
 良太は「そうですねえ」と笑う。
「ほんまに、良太は遠慮とか歯に衣とかとは無縁やなあ」
「俺だって人を見て話しますよ。第一、そういう千雪さんに言われたくないです」
 結局いざとなったらタクシーにすることにして、良太もワインを口にした。
「あ、これ、美味いですね」
「なかなかええ選択やで。飲めへん京助、可哀そうに」
「なんだかんだ言って、京助さんのこと、思ってるんですね」
「ひと口で酔うたんか?」
 何のかの言いながら、デザートにはプリンを平らげると、良太が食器をシンクに持って行っている間に、千雪がコーヒーを入れた。
「で? ドラマがなんやて?」
 リビングに移動して、千雪が切り出した。
「いや、ひとみさんもああ見えて試行錯誤してやってるんだなあと」
 ひとみがモニターを覗いて悩んでいた時のことを話すと、「なんや、ちゃんと良太、プロデューサーやっとるやん」などと千雪が笑う。

 


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