夢ばかりなる14

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「いえ、あれはほんのピンチヒッターでして」
 良太としてはこの話題は工藤の前では極力避けたかった。
 仏頂面がさらに不機嫌になるのがわかっているからだ。
「本業はプロデューサーでしたね」
 紫紀はにこやかに追い打ちをかける。
 名刺には確かに秘書のほかにプロデューサーという肩書きはあるのだが、良太としては半人前という自覚が十二分にある。
「いえ、まだほんの駆け出しで……」
 良太を焦らせるような話題はそこまでで、以降は本題のドラマについても少しばかり話し、紫紀との打ち合わせは和やかなうちに終わった。
「落ち着いたらまたぜひうちに遊びにいらしてください。もちろん、良太くんも」
 ただ、最初はかろうじて広瀬さん、だったのだが、途中からすっかり良太くん、に定着してしまっていることに、良太は小首を傾げないではいられなかった。
 やがて工藤と良太は応接室を出ると、紫紀に見送られてエレベーターにのりこんだ。
「連絡は入れる」
 一階で降りる良太にひとこと言い置くと、工藤はそのままエレベーターでパーキングがある地下へと向かった。
 案の定、工藤と話ができたのはほんのわずかだった。
 良太はぽつねんとひとりロビーに残された。
「ちぇ……」
 東洋商事を出た時は三時を回っていた。
 良太も慌てて丸の内線に続く階段を降りた。 

 


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