夢ばかりなる21

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    ACT 3
  

 
 明確に狙われているとわかったのは、夜九時を過ぎ、工藤は第三京浜を横浜へと車を飛ばしていた。
 おそらく、千雪を連れ去ろうとした連中だろう、追い越し車線に並んだ、バンパーもへこんだサンダーバードに半グレ風の若い男が数人乗っている。
 運転している男はかなり運転に自信があるらしい、工藤の車にガンガンぶつけてくる。
 ゴルフのクラブを振りかざした男を後ろに乗せたバイクが工藤の車のすぐ後ろについた。
 と思うや、ガシャン、と後ろの窓ガラスが割れた。
 天井もバシンバシンと殴りつけてくる。
「ざけやがって…」
 自分では手を汚さず、荒い仕事は下っ端の下っ端にやらせているのだろう。
「胸クソ悪いやつらだ」
 工藤はアクセルを踏む。
 だがバイクも車も派手にクラクションを鳴らしながら、しっかりついてくる。
「俺を甘く見るなよ」
 工藤は車体を左右に振りながら、バイクからガードした。
 スピードを上げ、隣を走るトラックを追い越そうとして、過積載気味のトラックからはみ出している鉄骨に気を取られたその時、バイクが追いつきトラックとの間に入ると、バイクの後ろに乗っている男がクラブを叩きつけた。
 思わず頭を下げた拍子に、車体が大きく揺れる。
 分離帯にぶつかる寸前でハンドルを切り返す。
 クソッ!
 とにかく振り切るしかないとハンドルを握り直した工藤は、前を睨みつけるように見据える。
 トラックの車体がミラーの後方へと小さくなった頃、前方を一台の車が走っているのが見えた。
 工藤の車と同じ車種、同じ色の車はいきなり走行車線を追ってきたバイクの前へと動いた。
 それに気づくのが遅かったバイクはハンドルを切り損ねて転倒し、乗っていた二人が中に舞うのがバックミラーに映し出される。
 さらに後を追いかけてきたサンダーバードはバイクにぶつかった直後、分離帯に激突した。
 一瞬の出来事だった。
 工藤は急ブレーキをかけると、車を路肩に寄せて停まる。
 後続の車も危うく玉突き事故になる寸前で次々と停まった。
 ところが、バイク転倒に間接的原因となったのではないかと工藤が見た車がすっと隣にきて停まった。
 運転していた男が降り立ち、工藤の車のウインドウを叩く。
「すぐに車を出してください」
「え……」
「早く!」
 若い男はメガネで顔の表情は見えないが、荒療治をするような輩には到底見えない、どこかインテリ然としている。
 だが、おそらくあの男、『T』の部下に違いない。
 工藤は車を発車させる。
 男は車に戻ると、しばらく工藤の車を追いたてるように走り続けたが、目的地に近づいた頃、後ろの車はスピードを上げて追い越し車線へとハンドルを切ったかと思うとかなりのスピードで走り去り、工藤の視界から消えた。
「―――良太……」
 工藤は声に出して呼んだ。
「どんなに今お前がここにいないことを喜んでいるかわかるか?」
 九死に一生を得るようなところに、良太を連れてきてたまるか。
 工藤の想いが果たして良太に届いたかどうか。
「俺の傍なんかにいない方がいいんだ」
 工藤を抹殺しようとしているのが誰なのか、まだわからない。
 だが、「獅子身中の虫」がいるらしいことだけはつきとめたと、『T』は、工藤が電話をかけるのを待ち構えて言った。

 


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