「きな臭い相手があるんやったら、とりあえずそこから探ってみるしかあれへんね」
千雪が言った。
そこへ秋山がCMのロケ地からアスカを連れて戻ってきた。
「ほんっと、冗談にもほどがあるわよ! あんなオヤジとなんて考えただけでもキモいったら!」
ソファに座りしな、アスカが喚いた。
「一体全体、このでっち上げ、誰が、何の目的で仕組んだんですかっ!」
普段は冷静沈着な秋山がらしくもなく興奮して言った。
「まあまあ、お二人ともほんとにお疲れ様。お茶をどうぞ」
鈴木さんに労われた二人はようやく肩の力を抜いた。
「それが、藤堂さん経由で入ってきたきな臭い噂によると、東プロモーションじゃないかっていう話なんですが」
二人がお茶を飲んで少し落ち着いたところで、良太が極力抑えた声で伝えた。
「東プロモーション? ひょっとして小菅もえとか?」
すぐに切り返した秋山に、「え、何か、それらしい兆候があったんですか?」と良太は尋ねた。
「いや、ここのところやたら小菅と顔を合わせることが多かったが、役柄がアスカさんと被るんだよ。それで大抵アスカさんが残るんで、最近、顔を合わせると目に見えてこちらを睨んでくる、といった程度だが」
その程度で人を貶めるようなデマを流したりするだろうか、と良太は思う。
「こっちは鼻にもひっかけたくないわよ、あんな子」
アスカは不遜なことを口にする。
「ただ、小菅のマネージャーが、ちょっと曲者らしくて」
秋山のセリフに良太が顔を上げた。
「山下か」
そう呟いたのは工藤だ。
「え、またその山下って人に、工藤さん、昔、何か恨みつらみをかってるとか?」
良太はつい直球で聞いてしまう。
「貴様、俺を、恨みつらみの温床だとでも言いたいらしいな」
工藤はジロリと良太を睨みつけた。
「だって、こないだの富田の件といい、工藤さんに長年の恨みつらみで仕掛けてきたじゃないですか」
「まあ、工藤さんに限っては、誰ぞに恨みをかう相手いうてもわかれへんわな、多すぎて。それに行動言動からも知らず知らずに妬まれとるとか、あるかしれんし」
良太の発言に輪をかけて千雪が工藤をビシバシつつく。
そうだよ、白河優菜なんて、これまで名前もあがらなかったじゃんね。
やけに親し気に、しかも一言二言で拒否ってたオファーをOKさせるとかって、どーゆー関係だよっ!
アスカの一件で話題が変わったから、これ幸いと思ってるかもだけど、俺の頭にはきっちりインプットされてるからな!
良太は腕組みをして難しい顔をしている工藤をちらりと見やる。
確かに、スポンサーや周囲への影響だけでなく、下手をするとこの先の俳優としての中川アスカを左右する由々しい問題なのだ。
「東プロモーションは探ってみるとして、他に、きな臭い何か、思い当たらへん? 恨みをかうんは工藤さんの専売特許だけでのうて、アスカさん自身、どっかで恨み妬みこうてそうやん。気ぃつかんとこで意外な相手が、てゆうこともあるかもやし」
歯に衣着せぬ千雪の質問に、「何よ、その言い方! まるで工藤さんの次にトラブルメーカーみたいじゃない!」とアスカは憤慨する。
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