さらに大抵、この手の報道では当の本人のこれまでのプロフィールまで重箱の隅をつつくように情報が流れる。
それだけでなく、これまでにも何かと週刊誌ネタを提供していた事務所の社長である工藤に対しても余計な詮索が入るかも知れないことを良太は懸念していた。
ただし、ネタを提供したといっても、四分六で周りが勝手に工藤に絡んできて取り沙汰されたということの方が多いのだ。
まあ、山之辺芽久にしろ山内ひとみにしろ、実際関係があった相手もいたわけで、不倫沙汰は公にはなっていないだけなのだが、工藤の場合、色恋沙汰より、自殺した村田ゆかりの一件など、工藤が村田と関わりがあっただけで、直接の原因ではないのにもかかわらず、噂はゆがめられて工藤のせいで村田が自殺したことにされている。
そういった古いネタまで穿り出したがるのがマスコミなのだ。
今朝のアスカは無理に平気なふりをしていた気がした。
一気にテレビからSNSからネットからこの話題で持ち切りとなったが、アスカにしてみれば事実無根にもかかわらず叩かれているのだから、全く冗談じゃない。
多少の悪口雑言にはびくともしないアスカだが、根も葉もない噂というのにこれに対するSNSの中傷がまたひどいのだ。
あんなコメントを毎日見せられた日には、誰しも心が折れるのも当然だ。
秋山はアスカの精神状態を心配して、エゴサーチはするなと言っているようだが、アスカはアスカで、自分を心配して集まった秋山は当然のことながら良太や千雪に対して珍しく申し訳ないなどと口にしていた。
「ほんとに何なんだ、このでっち上げは!」
ついエレベーターで一人になった時には声に出していた。
エレベーターが開く寸前、良太の携帯がポケットで振動した。
「お疲れ様です。今、安田不動産です」
工藤だった。
「会社に戻ったら、さっき浮上した動画を加藤らに調べさせろ」
「動画、ですか?」
何のことだと良太は訝しむ。
今朝スクープだとかでテレビやネットに流されていた画像は、確かにアスカと江藤のようだが、以前、良太が局アナの市川と雑誌に掲載されていた画像が、実は大人数でいたにもかかわらず二人だけをピックアップしたような画像だったように、おそらく周囲に誰かしらいたに違いないと思われるものだった。
だが、動画は今朝はなかったはずだ。
「つい今しがた、スクープとかで文化芸能がネットに挙げてきた」
工藤の話に良太は胸騒ぎがした。
オフィスに戻ったら早速加藤に連絡を取ると言って電話を切った良太だが、そのまま携帯で検索しようとしたが、時間がなく諦めた。
早く切り上げたい時に限って、先方に電話が入ったりして打ち合わせが当初の予定より延びてしまい、慌ててオフィスに戻るとすでに十二時を回っていた。
「あら、良太ちゃん、お帰りなさい。お昼はどうする? お弁当買いに行くけど」
帰るなり自分のデスクのパソコンの画面を覗き込んだ良太に、鈴木さんが声をかけた。
「あ、すみません、俺の分もお願いしていいですか? お任せで」
「わかった。あんまり根詰めないでね」
鈴木さんはパソコンに顔を向けたままの良太に心配そうに言った。
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