夢見月53

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「よう、来たな」
 肇とハイタッチして良太は二人を出迎えた。
「やたら人増えたね」
 かおりも人の熱気に驚いている。
 花見は何回めかのかおりは品のいいサーモンピンクスーツがよく似合っているが、たかだか会社の裏庭での花見の会に俳優陣がどこぞの大パーティに出るような装いでやってくるのを覚えていて、かなり念入りに決めてきたらしい。
「やってくれたな、沢村」
 肇がMLBでの沢村のさよならホームランのことで嬉し気に言った。
「向こうに行ったら沢村くんのインタビューもするんでしょ?」
 かおりに言われて良太は「そうなんだよ。仕事がまた増えた」と訴える。
「楽しみにしてる!」
 シャンパンや飲み物を渡すテーブルでは、森村が一人で客人のリクエストを聞いてグラスに酒などを注ぎ、孤軍奮闘しているのを見て、真中が助っ人に立った。
 秋山は空いた皿を回収したり、料理などの状況を見てさり気に各テーブルを回っている。
「おお、盛況じゃん」
「わあ、きれい~」
 やがて顔を出したのは、セッティングを済ませて万里子を仕事先に迎えに行った井上夫妻だった。
「久しぶり、良太ちゃん。渡米の準備は進んでる?」
 万里子に言われて、「それが、何かやたら向こうでの仕事が増えちゃって」と良太は眉を顰める。
 万里子はアハハと笑い、「そういうのも過ぎてしまえば楽しかったことになるわよ」などと悟りの口調で言った。
「あ、万里ちゃん!」
 万里子を認めると、手を振りながらアスカがたったかやってきた。
「アスカちゃん、すっかり元気だね」
「あの時のお礼も言ってなくて、ほんとに、ありがとうございました!」
 頭を下げるアスカに、「やだ、他人行儀すぎ! 同じファミリーじゃない」と万里子はよしよしとアスカの頭を撫でる。
「すっごいいっぱいいるね」
 アスカと万里子のようすを微笑ましく見ていた良太は、後ろから袖を引かれて振り返った。
「紗英さん! わざわざありがとうございます」
「またまたあ、他人行儀過ぎ! 良太ちゃん、ファミリーじゃん」
 紗英は万里子のセリフをそのまま口にした。
「だからその、ファミリーっての、やめてもらえます? 何かみたいじゃないですか」
 すると紗英は高らかに笑い、シャンパングラスを手に、「ひとみさーん」とひとみや宇都宮をみつけて歩み寄った。
「うっす。えろ、賑やかやん」
 のっそりと大柄な四人が現れて、一足先にシャンパンを手に辻が庭を見回した。
「辻さん、加藤さん、白石さん、今夜はありがとうございます。あ、三田村さんも」
 ライダースブーツの三人とは違ってブランド物のスーツで現れた三田村は、「花見なんて何年振りや」と感慨深そうに桜を見上げた。
「研二さんはご一緒ではなかったんですか? いらっしゃるって聞いてましたが」
 良太に言われて、三田村はしばし、うーんと何か逡巡していたが、「そろそろ来るやろ。今日は匠とどこぞの茶会に行ってて一緒に来る言うてた」とぼそりと言った。
「あ、そうですか」
 良太も突っ込んで聞いたことはないが、研二と千雪の間には何かしらあるらしいし、良太は以前、研二が好きなのだと、匠本人から聞いたことがあり、そのあたりいろいろ複雑な思いが絡んでいそうだった。
「良太、久しぶり!」
 ぼんやり考え込んでいた良太は、当の匠に肩を叩かれた。
「お久しぶりです! 今日はわざわざありがとうございます」
 匠の後ろに静かに立っていた研二はちょっと頭を下げた。
「おそうから押し掛けてもて。せえけどえらい人ですね」
「ええ、会社の小さい庭の桜なんですけどね~」
 良太は二人が飲み物を受け取ると、庭へと促した。
 

 


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