良太の頭の中には、昨今W不倫で思った以上にマスコミやSNSなどでも叩かれ、ドラマやCMを降板、築き上げてきたキャリアも失墜した美人俳優の騒動が駆け巡った。
人気俳優だったからこそ出演していたCMも多く、高額の違約金が発生したはずだ。
今当人は海外留学という名目で日本を離れているが、清純派という売りで人気を上げてきたことで相手の男性より一層中傷の嵐を巻き起こしたことは記憶にも新しい。
実力はある俳優だからいずれは復活もあるとは思うものの、なかなか厳しいものがあるだろう。
アスカは清純派とは一線を画すものの、人気俳優だけに風あたりがどの程度のものか、CM契約は五社だが、違約金よりも万が一降板ということにでもなれば、今後の活動にも大いに影響が出るだろう。
決まっているドラマや映画出演に関しても、近々のものから降板ということになりかねない。
CMといえば、東洋商事ニューヨーク支社の広報プロジェクトでアスカはイメージキャラクターに決まったばかりだ。
非常にまずいぞ、これは。
「噂だけやのうて、証拠画像なんかも掲載されるん?」
良太がひとり頭の中であれやこれやと考えているうちに、千雪の冷静な声が静かに響く。
「ああ、江藤がアスカにやたらべたついている写真なんかがな」
工藤が苦々しい顔で吐き出すように言った。
「でもアスカさんが不倫とか、絶対あり得ないですよ」
思わず良太は断言した。
ずっと千雪を追いかけていたと思いきや、実は秋山を好きだとアスカは胸の内を良太に告げている。
だが、今のところ告るつもりはなく、秋山はどうやらアスカのそんな気持ちに気づいてはいないようだが、傍から見たらカップルとしか思えないほど、二人は一緒に行動していたし、二人三脚でこれまでうまくやってきたのだ。
「アスカさんが身に覚えがないわけやから、そのネタ自体が捏造いうことになる。今までもあったように、工藤さん絡みで誰ぞが仕掛けてきた、いうことやな」
千雪が淡々と言った。
こういう時、千雪は怜悧に頭を働かせて、物事の先を読んで素早く動く。
それが千雪の凄みだと、良太は改めて思う。
警察が犯人扱いしている容疑者にかかりきって無駄な時間を過ごすうちに、千雪は容疑者をシロとして推理を働かせて動くから、真犯人にたどり着くのだ。
常に警察を無能扱いする千雪が良太にもわかる気がする。
「昨今、巧妙なフェイク動画までネット上に出回っているから、注意してかからないとですよね」
一人良太は頷く。
「とにかく小田にも早急に調査を依頼した」
工藤が言うと、「加藤さんたちの応援もお願いしときます」と良太は早速携帯で猫の手軍団を呼び出した。
「ほんとに、アスカさんが不倫だなんて、あり得ませんわ」
コーヒーを入れて三人に配りながら鈴木さんも珍しく難しい顔をしている。
「スケジュール的にも江藤と会う時間なんて、アスカさんにありませんよ。ここんとこオフは部屋でダラダラしてるだけって言ってましたし」
鈴木さんではないが、アスカを知っている者なら、不倫などとは到底ほど遠い存在だというだろう。
加藤との電話を切ってすぐ、良太の携帯が鳴った。
「あ、お世話になっております」
電話の相手がなぜかけてきたのか良太は瞬時に判断した。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
