真夜中の恋人15

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「あら、おいしそう。いただきます」
 万里子はソファに座り、長いストレートの髪を無造作に搔き揚げると、クッキーをつまんだ。
「ねえ、それより鈴木さん、今夜もこんな時間まで? あとはあたしやっておくから、いいわよ、帰っても」
 鈴木さんを労わり、気軽にそんなことを申し出る万里子は、さっぱりした性格のようだ。
 そういえば、確か平造が、鈴木さんがいなかった時、オフィスのことをやってくれていたと話していたのは、彼女のことだったかもしれない。
 千雪は万里子を見つめた。
「女優さんに、そんなことさせられませんわ。小林さん、お紅茶おかわりいかが?」
「ありがとうございます。俺はもう結構です」
 鈴木さんがキッチンに引っ込むと、しばし沈黙があった。
「小野、万里子さん?」
 雑誌の表紙と見比べながら、千雪は呼んだ。
 つまり、映画のヒロイン候補はおそらく彼女だろう。
「映画のヒロイン?」
「ええ、工藤さんにやってみないかって言われて。映画は久しぶりだから、嬉しいわ」
「こんなミステリーの犯人役でも?」
 工藤に任せると言ったものの、ヒロインということになると犯人役になるわけで、ちょっと千雪は聞いてみたくなった。
「私、好きよ、ミステリー。本も読んだけど、何か、ミステリーにしてはロマンチックだし、それに面白かったわ。あ、あなたも出るの? この映画に」
「そうだ、出るか? お前も、映画に」
 万里子に答えたのは、ちょうど戻ってきた工藤だった。
「冗談言わんでください。それと、ええ加減なこと言うの、やめてください」
「あっちが勝手に思い込んだんだろ。俺はダシじゃなくてホントにしてもいっこうに構わないが」
 工藤はニヤニヤと煙草に火をつける。
「そういう笑えないジョークはもっとやめてほしいわ。そういえば、犯人とか、原作のままなんですか?」
 一言釘を刺して、千雪は尋ねた。
「あたりまえだ。お前もいじられるのはいやだろう?」
「まあ、そうですけど、映画になったらやっぱり別物ですし」
「あの!」
 二人の会話を聞いていた万里子が口を挟む。
「えっと、まさか、小林さんって…………」
「小林千雪、原作者と会ってもらうと言っただろ?」
「ええええええーーーーっ! ウッソォ! 何で???」
 工藤の答えに、万里子は思わず立ち上がった。

 


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