万里子には、小林千雪の正体については社外秘だといい含めて、工藤は万里子と千雪のためにタクシーを呼んだ。
いちいち驚かれるのも面倒なので、千雪としてもそうしてくれると有難かった。
部屋に辿り着くとどっと疲れが出て、千雪はベッドに倒れこんだ。
肉体的疲労というより、人間関係的なものが原因に違いない。
シャワーを浴びてから寝ようとむっくりと起き上り、バスルームのドアを開ける。
飲み会で散々いじられた挙句、青山プロダクションでもまた美女に絡まれるなんて。
「全くええ加減にしてほしいわ」
工藤ときた日には適当なことばかり人に振りまいてくれるし。
ふとその時、千雪は宮島教授の言葉を思い出した。
「調べてみるといいって、工藤のこと?」
怪訝な面持ちでバスルームから出てくると、喉が渇いて冷蔵庫に一本残っていたポカリスエットを思い切りよく飲む。
ようやく人心地ついた気がした。
「調べてみるか」
フウと息をついた時、チャイムが鳴った。
「俺だ、開けろ」
無視したところで、勝手に鍵を開けて入るのが関の山だ。
仕方なく、千雪はドアを開けた。
ドアが閉まるかしまらないかのうちに、京助は千雪に覆いかぶさってきた。
「おい、酔うてんのか?」
「誰が、酔ってるもんか。千雪ちゃん、いい匂いがする」
「アホか! こら、やめ………お前は酒臭いぞ!」
絡み付いてくる京助を押し戻そうとするが、酔っ払いは酒臭い息を吹きかけながら、千雪の唇を奪い、あちこちにキスしまくる。
「うわ、きょ………」
果てはそのままベッドに千雪を引き摺って行って千雪ごと倒れこむ。
おまけに千雪の上に馬乗りになったままズボンを脱ぎ始めた京助に、千雪は焦って身体を引こうとするが、大きな男が思いきり体重をかけているため身動きが取れない。
「冗談やないで! 昨日の今日で!」
「うるせぇ! やらせろ!」
京助が身体を浮かせたので、千雪は何とか這い出そうとして足蹴りして暴れた。
ところがその足をぐいと掴むと、京助はくるりと千雪をうつぶせにしてしまう。
「この、酔っ払い! 離せ!」
京助にとってはおあつらえ向きに、シャワーを浴びたばかりの千雪はTシャツとパンツ一丁だ。
「ヤツら勝手なことを言いやがって! いいか、文子となんか大昔の話で、今さらどうこうなるわけ、これっぽっちもねぇんだ!」
怒りの勢いに任せて、それでもローションを手早く使うと京助は千雪に押し入った。
「う……あ……」
一瞬身体を硬直させた千雪だが、京助のことを聞いてきた文子の言葉がふいに頭をよぎり、途端、熱く血液が一気に逆流する。
やから……京助の女を妬いてるみたいな、こんなの……いやや……
胸の奥で黒々しく蠢いている感情を必死で否定する。
酒のせいで凶暴性を帯びた京助の行為に、千雪は抗う気力もなくなって言葉にならない声を上げる。
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