真夜中の恋人22

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「捜査一課の刑事だ。だいたい、こないだは千雪を容疑者扱いしといてどの面下げて来やがるんだ! 厚顔無恥な連中だ。千雪なんかに頼らず、ちったあ自分の頭を使ってみたらどうだ?! へっぽこデカどもめ!」
 むしゃくしゃしていた京助は、ちょうど現れた渋谷に当り散らす。
「千雪さんが怒るの、あたりまえだわ」
 それまで静観していた文子を三人は振り返った。
「速水くんも佐久間さんも、第三者からの伝聞をそのまま鵜呑みにしてるだけじゃない。その工藤さんて方のこと、ちゃんと調べてからならわかるけど、まるきり説得力ないし、らしいやみたい、なことで他人を貶すなんて、速水くんらしくないけど?」
 静かな言いまわしで窘められ、速水は肩をすくめる。
「京助さんのは頭ごなしって感じで、問題外ね」
「うっせーよ」
 文子にも京助はあからさまに仏頂面を見せてふんぞり返った。
 あのヤロウ、妙に工藤の肩持ちやがって!
 千雪が遮らなければ、京助はとっくに自分の感情を吐露していただろう。
 京助としてはそうやって押し隠すのすらもどかしいだけなのだが。
「ま、いんじゃねーの? 名探偵が自分で決めてやってることだ。確かに俺らに関係ないし? どうなろうと知ったことか」
 千雪だけでなく、文子にまで諌められたことが速水には面白くなかった。
 しかもその通り、なだけに、負け惜しみの台詞を吐いて、速水は立ち上がった。
 
  
 

 
 
 小田和義の事務所は地下鉄半蔵門線の半蔵門駅を降りてすぐに見つかった。
 宮島教授の名前を拝借したせいか、詳しいことは話さなかったが、六時過ぎでよければと急だったにもかかわらずアポは取れた。
 古いビルの二階が事務所になっており、広くはないがこじんまりと清潔感のある印象を受けた。
「小林様ですね、どうぞこちらへ」
 受付をしてくれたのは長身に眼鏡をかけ、茶髪をひっつめ、スーツが板についた女性で、千雪が一応ジャケットは着ていったものの眼鏡にボサボサ頭というイデタチにも関わらず、背筋を伸ばしたきりりとした応対で千雪を応接間へ案内してくれた。
 それにアクセントが関西風なのに、千雪は親しみを覚えた。
「お待たせしました」
 先ほどの女性がお茶を運んできたのと入れ替わりに、小田が現れた。
「小田和義です。どうぞ、お座り下さい」
 立ち上がって名刺を受け取った千雪は、「小林と申します。お忙しいところお時間をさいていただきありがとうございます」と言いつつソファに座りなおす。
 小田はがっしりタイプで少々腹が出てきつつある落ち着いた雰囲気の人物だった。
 温厚そうだが、広い額や目の輝きが、知性を物語っているようにみえた。
「宮島教授のところの小林さんというと、あの名探偵殿かな? 小説家の」
 小田は軽妙な口調で切り出した。
「勝手な噂をたてられてるだけですが、小林千雪です」
 千雪は少し自分の名前を強調して小田を見た。


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