真夜中の恋人39

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 第一、どこをどうしたらそういうことになるのか、小、中、高と三田村にはイジメに近いいじられ方をしてきた千雪にはさっぱり理解できない。
「小林くん、三田村くん、お待たせ」
 何だか妙な話になりかけたところへ、桐島が現れた。
「おう、早かったな」
 隣に座る桐島に、三田村が言った。
「え、もっと後の方がよかった?」
 やってきたウエイターに、ワインといくつかの料理をパパっと頼むと、桐島は千雪に向き直る。
「それより、さっき、びっくりしたわ。これは知らない振りをするべきや思たけど、何? あれ、おもろかった」
「何や何や、さっきてどういうこっちゃ? 二人して、俺に内緒の話か?」
 笑いだす桐島に、三田村が突っ込む。
「すまんかったな、桐島。あれはその、あいつに同じようなことされたよって、やり返したっただけや」
 サラッと千雪は説明する。
「だって、それまですごく理知的で大人で自信たっぷりやった速水さんが、途端、しどろもどろになってしもて、あれは何か、勘違いしてるんだ、あれは、とかって」
 桐島にしては興奮気味にまた笑う。
「それで私、言ってやったの。あんなステキな方を泣かせたらいけませんわ、速水さん。誤解を解いた方がよろしいと思います。友人にも男同士のカップルとかいますから、偏見はありませんわ……って」
「何やそれ、俺にもわかるように説明せいや」
 三田村がせわしなく桐島に問いただす。
「こちらにきて、たまたま、文子さんと電話で話したの、飲み会があるっていう日。そしたら、速水さん、小林くんの見てくれを面白がって、初対面から名探偵に突っかかるのよって」
「ああ、そう。いろいろ言うてくださったで」
 千雪は頷いた。
 まあ、それ以前に腹の立つことはあったんやけど。
「それで私、私は振られたけど、すごいステキな名前だし、すごい人気あったんですって、言うてくださいって、文子さんに」
「そら、悪かったな、気ぃつかわせてしもて。あのなりしてると、ほんま誰も寄り付かんから俺としてはあり難いんやけどな、たまに面白がって近づくやつとかもいて」
 それでか、と千雪は文子の言葉の意味を納得する。
 つまり、文子さんは俺の加勢をしてくれはったと。
「何や、それでお前そいつに大学でいじめられよったから、何をしたんや?」
 三田村が我慢できずに話に割り込んだ。
「愛してるって言ったのに、女と会ってるなんて、ひどい! って、ラウンジで速水さんに」
 桐島が説明すると、三田村はくっくっと笑う。
「言うたんか? そらま、気の毒に」
「桐島に振られた話、自分でしてたし、これで最後の望みも消したったかなと」
 千雪はさらりと言って、残っていたワインを飲み干した。
「こいつに睨まれたら最後、どないな目にあうか、身をもって知ったわけやな? そいつ」
 三田村はフフンと笑う。
「おかしな言い方しいなや」
 軽く千雪は否定する。
 そうや、速水のことを気に食わん理由、他にもあるからな。
「覚えとるやろ? 二年の数学の大崎、徹底してこいつに無視されよって、次の年には転任していきよった」
 三田村がテーブルを叩きながら笑う。
「転任まで俺のせいにすんな。やから、上のもんやとか、市議の息子とかやと裏でヘコヘコしよって、ちょっと気に入らん生徒つかまえて必要以上にネチネチ言うとったやんか、あいつ」

 


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