真夜中の恋人4

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 久々、静かな週末をひとりで過ごし、月曜の朝は少しばかりまともな頭になって千雪は研究室に向かった。
 小ざっぱりしたジャージの上着とスニーカーは昨日スーパーで買ったばかりだし、ズボンも洗濯をしたものだ。
 ただ、本人は非常に清潔で小ざっぱりとし、最近の柔軟剤の香りも嫌いではない、にもかかわらず、本を読みながらキャンパスを歩いていると、どこからともなく失笑が聞こえ、中には聞こえよがしに、来たぜ来たぜ、うちの名物男が、とか、ホントに犯人でもおかしくないよね、とか、近寄るなよ、臭いのが移るぜなどと声高に話しているのが耳に届いたりする。
 まあ、今日はことさら髪を掻き回してみたし、選んだ上着の色は濃いグレイ、襟は何故かレインボー、紺色のおじさんズボン、安物の合皮スニーカーの色がまた濃い茶色と敢えて色目はあり得ない組み合わせを目指しているところがミソかも知れない。
 小林千雪、T大法学部研究室に籍を置いているが、どちらかというと在学中に書いたミステリーが賞を取ったり、そのお陰でたまたま警察から助言を求められたことで容疑者逮捕につながったり、千雪のギャグマンガから飛び出したかのような冴えない風貌と勝手に用心棒のように千雪にくっついている綾小路京助がイケメンだったりしたため、ここぞとばかりに一時は名探偵とその相棒としてマスコミに騒ぎ立てられ、今やこのキャンパスならずとも知る人ぞ知る名物凸凹コンビとなっていた。
 京都での飲み会の際も、このイデタチ、コスプレが話題になり、実はこの組み合わせは同級生らが面白がって提案してくれたものだ。
 今まで、おとなしめの色を選んでいた千雪は、それはいいかもと早速実行してみたというわけだ。
 千雪の家に集まったクラスメイト達はちょっとオッサン臭くなったくらいで、中身は変わりなく、江美子や菊子、それに研二にしても、どうせ俺のことなんか忘れてるんだ、などと勝手に捻くれていた千雪だが、やはり昔と同じ大切な仲間なのだとあらためて思ったりした。
 フッとそんなみんなのことを思い出して笑った時、どこからともなく、げ、笑ったよキモ、などと聞こえてきたので、千雪は思わずその声の方を向いて、にっこり笑ってやった。
 声の主の女子学生らは、きゃあ、キモ~とばかりにひしと抱き合っていた。
 そういう反応も面白くて、心理的な要素として小説に取り入れようかなどと真面目に考えている昨今である。

 


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