真夜中の恋人5

back  next  top  Novels


「あ、先輩、みいーーっけ!」
 サンドイッチで軽く昼を済ませ、ゆっくりカフェテリアでコーヒーを飲んでいた千雪のところへ、うるさい男がやってきた。
 同じ宮島教授の法学研究室にいる後輩、佐久間徹である。
「先輩、まぁた携帯切ってますやろ? 色々話あったのに」
 勝手に向かいに座り、佐久間は持ってきたコーヒーをズズッとすする。
「俺にはあれへん」
「またまた、そんなつれなさそうな顔して、ほんまは聞きたいんですやろ?」
 同じ関西出身とはいえ、大阪出身のとにかくうるさいばかりの佐久間がぐぐいと顔を覗きこむので、千雪は思わず後ろに身体を引いた。
「今夜の飲み会、先輩も行きますやろ?」
「飲み会? んなもん、行くか」
「またまたまた~、絶世の美女がきはるんでっせ? 大原文子さんいうて、しかも超才媛、ここの二年の時、マサチューセッツ工科大に留学しはったいう、正真正銘の深窓の令嬢でっせ?」
 即答する千雪に、めげずに佐久間はたたみかける。
「全く興味ない」
「あきまへん、もう先輩、メンバーに入ってますし。京助先輩とこの法医学研究室とうちの研究室との合同の飲み会やから」
「何やねん、それ」
 千雪は怪訝な顔で佐久間を見た。
「ちょうど先輩が研究室出ていかはった後で、法医研の面々が文子さんと一緒にきはって、文子さん、ここに在学中は宮沢教授とも懇意にしてはったみたいで、まあ、特に牧村さんが先頭に立ってたみたいやけど、急遽そういうことになりましてん」
「勝手にやったらええ。俺はパス」
「そうはいきませんて、速水さん、て、京助さんの親友で、文子さんと一緒にうちの大学の心理学教室と共同プロジェクトに参加してる人ですけどね、今度の学会のために帰国しはったみたいで、その人がぜひ名探偵に会いたいて、ほんで、飲み会が決まったんですわ」
「何やて?」
 聞き流すつもりだったが、どこかで聞いたような名前に、千雪は思わず聞き返した。
「せやから……あ、噂をすれば、京助先輩~! こっちこっち!」
 佐久間が大声で呼びかけたその先を見て、千雪は一番考えたくなかった事態に直面することになった。
「美人ですやろ? 文子さん。ほんまに~。まあ、京助さんの元恋人やし、焼けぼっくいに火をつけようと、周りは画策してるみたいやけどね」
「へえ、そうなん?」
 またか、と千雪は思う。
「君が、名探偵か。はじめまして、京助の親友の速水です」
 逃げる間もなく、速水は京助や文子、それに牧村を従えて近づいてきた。
「小林です」
 握手をと差し出されたその手を無視して、千雪はそれだけ言った。
 宙に浮いた手を仕方なく引っ込めた速水だが、テンションは下がらない。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます