真夜中の恋人43

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 速水はホテルNのラウンジから自分の滞在しているホテルへと戻る道すがら、京助を呼び出して文句を言わないではいられなかった。
 ひどくイラついていた。
 あんなガキにしてやられるとは。
 あんなガキに。
 あの類のガキは躾けなおしてやる必要がある。
 世の中そうそう甘い人間ばかりじゃないのだと。
 京助を誑かしているのなら、ガキには灸をすえて、京助の目を覚まさせてやらないと。
 京助が話したのでないなら、どうやって俺が彼女とあそこで会うことを知ったんだ?
 あのガキ!
 ただじゃおかない。
 部屋に戻るとルームサービスでワインと料理を頼み、シャワーを浴びた。
 少しワインをやった後、しばらく論文をいじっていたが、ふと思い出したことがあった。
 そうだ、確かあのプロダクションから出てきたんだ。
 京助の後をつけた夜のことを頭の中で辿る。
 モデルか俳優のタマゴってところか。
 思い立つといてもたってもいられなかった。
 きっちりとスーツを着込むと、速水はもう一度部屋を出た。
 
   
 
 
 一方、青山プロダクションのオフィスでは、小野万里子を前にした三田村が狂喜していた。
「いやあ、お目にかかれて光栄です。千雪とは高校の同級生で三田村潤といいます」
 三田村が小野万里子の手を握り締めるようにしてなかなか離さないので、万里子も困惑している。
「三田村、ええ加減にせぇよ」
 千雪に言われてようやく手を離したものの、三田村は満面の笑みを浮かべて足元も浮ついている。
「そうかて、俺、高校の時からファンやってんで。直にお目にかかれる時がくるなんて」
「芸能関係全然興味ないって顔して生徒会長やってたくせに、実はミーハーやってんな」
「しかも、お手ずからお茶をいただけるなんて」
 千雪の揶揄にも三田村は舞い上がったままだ。
 二人が顔を覗かせると、既に鈴木さんは帰っていないし、マネージャーの菊池はたまたまコンビニへ買出しに出ていた。
 いつものごとく工藤は電話で何か怒鳴っている。
 それで万里子がコーヒーをいれてきたのだ。
「でも高校の時からとか言われると、私、随分おばあちゃんってことよね」
 自分もコーヒーを飲みながら、万里子はボソッと口にする。
「とんでもない、万里子さんは永遠にお若いです!」
「三田村さん、今、おいくつ?」
「二十三です」
「やっぱり二歳もおばあちゃんだわ」
「歳とか女優さんには関係ないと思います」
 フフッと笑う万里子に、三田村は鼻息も荒く断言する。
「テレビのデビュー作の『はじめの一歩』からずっと観てました」
「やだ、恥ずかしい、そんな古い話!」
 恥ずかしいと言いながら、万里子も熱心なファンに満更でもないようすで、二人はしばし万里子の出演したドラマや映画の話で盛り上がった。


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