真夜中の恋人54

back  next  top  Novels


「お前ら、どういうおつきあいしてんのや?」
 真っ向から問われた千雪は一呼吸置いて三田村を見返した。
「どういうも、ないで? ほな、俺、講義あるから」
 ごまかしは効かない、三田村に気づかれたと千雪は思ったが、三田村なら今さらどうでもいい。
 千雪は空の紙コップを持って立ち上がる。
「来週末、桐島のリサイタル、行くやろ? またチケット持ってくるわ」
 三田村は千雪の背中に向かって言った。
「ああ、わかった」
 人に知られて、後ろめたいなんて、好かん。
 京助はストレートに感情をぶつけてくる。
 でも俺がいてへんかったら、京助は文子やもっと他の女性に愛情を向けてたん違うやろか。
 何か、俺、ひょっとして、京助にとっては疫病神と違うか?
 ああ、ほんまに、こういう感情のモヤモヤが嫌なんや。
 千雪はひとり、どこにも持って行き場のない感情をもてあました。
 
  
 

 
 
 ようやくレポートにも目処がついたので、部屋に帰ってベッドに横になっていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。
 電話の音で目が覚めた。
「………はい」
 しつこく鳴り響く電話のコール音に、やっと起き上がった千雪はひどく不機嫌な声を出した。
「千雪くんのお陰で、真犯人逮捕した」
 いつもに増して大きな声は渋谷だった。
 事件は急展開し、今朝ほどの千雪の下手な芝居に真犯人が食いついて、逮捕に至ったという。
「田辺の婚約者に張り付いてたらこの女、何かを例の証拠品が見つかったすぐ近くに捨てたんで、問い詰めたら簡単に全て吐きましたよ」
 女が持っていたのは血痕がついた巾着で、老婆のものだった。
 実は田辺が老女のところに通う以前、彼女が行っていた。
 だが、彼女がたまたまその巾着を見つけたので、老女は他の介護士に代えさせたというのだ。
 彼女はその巾着におよそ三百万が入っていたのを婚約者の田辺に話した。
 田辺は派遣センターで老女の担当に志願し、それを奪う機会を狙っていた。
 だが、いざそれを盗み出したと思った途端、眠っていたと思った老女が目を覚まし、大きな声を上げ始めたので、慌てた田辺はキッチンから包丁を持ってきて老女を刺し、孫の真山が忘れて行ったらしいジャケットがあったので、凶器の包丁をそれに包んで公園の植え込みに捨てた。
 それが真相だった。
 いかにも場当たり的な犯行だったにもかかわらず、たまたまそこにあった真山のジャケットが使われたことに、警察はミスリードされた。
 渋谷のように疑いをもって動くものがいなければ、危うく冤罪をつくるところだった。
 人間がやることだからミスもあるだろうけど、やはり捜査する側は気を引き締めてかからないと、と渋谷は言って切った。
 冤罪にならなかったことに、少しばかり千雪もほっとした。
 お陰でしっかり目が覚めてしまい、今度は空腹なのを思い出した。
「何か買ってこよ」
 財布を持って玄関に向かおうとした時、チャイムが鳴った。
「俺だ」
 そういえば、京助が今夜来るとか言っていたな、とドアを開けると、「メシ、食ったか?」と京助は聞いてくる。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます