Vacances11

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 工藤や河崎の話している内容から、良太も大体のことは把握できた。
 工藤もドラマのために河崎らと同行してイタリアに飛び、撮影用にヴィラを押さえてきたのだが、持ち主から急遽使うことになったから貸せないという連絡が入り、こちらも番狂わせもいいところなのだ。
「来週明けから現地でCM撮りじゃなかったっけ?」
 良太はこそっとアスカに言った。
「週末には向こうに行くことになってんのよ。この土壇場で、怪我したから行けませんで済むわけないじゃない」
 アスカのスケジュールにしてもこれからかなりタイトだ。仮にCM撮りを伸ばすとしても、今度はアスカの動きが取れない。
 しきりとぺこぺこ頭を下げている眼鏡の男が、今回CMに出演することになっていたタレント尾崎貴司のマネージャーだった。
 まーた、長田プロかよ。まだ、あの記事のでっち上げが長田プロの仕業と決まったわけじゃないけどさ…。
 良太はフロア全体を冷静に眺めた。
 限りなくクロに近いグレイなのは確かだ。
 今日も涼しげにネイビーのスーツで、工藤はまだイタリア語で電話に怒鳴りつけている。
 ちぇ、自分だけさっさとビシバシ決めちゃって。
 その時、ふいに耳元で聞いた工藤の声。
 こら、起きろよ。
 あれ、それからキスされたような…
 うっわ~~~~~~~~~~~~~~~~
 夢現で定かではない。
 また自分の願望なのかもしれない。
 まさか、工藤がそんな優しそうなことするはずない……って、それ俺のデスクじゃん! 近づけないだろぉ~~~~!
「顔赤いわよ、熱でもあんの?」
 良太のデスクで電話をしている工藤を見て立ち往生している良太に、ボソリとアスカが言った。
「えっ! あ、暑いじゃん、今日」
「毎日暑いわよ。あら、良太、首んとこ何か…」
 うっそ~~~~~~~~っ!!
 思わず手で押さえる良太に、「なんだ、ホクロだ~」アスカはちょっと首を竦めてソファに深く腰をおろす。
 秋山もニヤニヤ笑っている。
「アスカさ~~ん!」
「良太ってば、可愛い~~」
 工藤と公認になってからというもの、アスカや井上が一緒になって良太をからかうのだ。
 すっかりバレバレという感じで、汗まで噴出してくる。
 益々自分のデスクに近づけずに、良太は立ったまま熱いコーヒーをすする。
「では私はこれで…違約金は今日にも振り込ませていただきますので…失礼いたします」
 眼鏡男が逃げるようにそそくさオフィスを出て行く。
「クソッタレ!」
 バン、と河崎が中央に置いてあるテーブルを叩く音に、良太ははっと我に返る。
 悠長なことを考えてる場合じゃなかったっけ。
「達也、いきり立つなって。そう興奮するとはげるぞ」
 藤堂が飄々と声をかける。

 


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