ACT 4
眩い夏の陽射しを受けて小さな港は輝いていた。
ポルトフィーノ、イタリア語でイルカの港と呼ばれるこの入り江はリヴィエラの東側に位置し、リグリア湾を臨む断崖絶壁に囲まれているため、隣接するサンタ・マルゲリータ・リグレの町から船で渡るのが最良の手段だ。
サンレモの町に代表される西リヴィエラ程ではないが、太陽の季節ともなれば、いろんな言葉を話す観光客が訪れる。
このポルトフィーノに集っているのは富裕な人々の一群だ。
ハリウッドスターを始め各国の要人たちのヴィラが海岸沿いに建ち並び、ヨットのレガッタに興を求める贅沢なリゾート地となっている。
季節になるとあちこちの豪奢なヴィラではヨーロッパ社交界の縮図のごとき宴が深夜まで続く。
今回撮影が行われるのはそのヴィラのうちのひとつである。
ローマから国内線でジェノバ空港に飛び、そこから二台の車とバスをチャーターしてアウトストラーダを約三十分も走るとサンタ・マルゲリータ・リグレの町に入る。
ポルトフィーノには宿泊施設は少ないため、一行はサンタ・マルゲリータ・リグレの町に宿を取ることになる。
鴻池だけでなく、アスカや青山プロダクション、プラグインの面々はここでも五つ星のホテルに宿泊することになっていた。
「あたし、一度ゆっくりきたかったのよ!」
アスカなどはサンタ・マルゲリータ・リグレの町から迎えのクルーザーに乗るなりはしゃいでいる。
良太も辺りの風光明媚な海岸線にすげえ、を連発。
井上はすかさずシャッターを押している。
そんなワクワクムードもやがて崩れ去ることになろうとは、良太も思っていなかった。
いくつもの大型のヨットやボートが浮かぶ小さな港に彼らを乗せたクルーザーが到着すると、桟橋に立っていた美女が駆け寄って工藤に抱きついた。
「高広! ようこそ! 何年ぶりかしら」
加絵・デ・ジョヴァノッティと名乗った豊かな黒髪のその女性は一人一人に気さくに話し掛けながら明るい笑顔を向け、優雅な仕草で一行を彼女のヴィラへと誘った。
村にはエルメネジルド・ゼニアを始め、カルティエ、エルメスやルイ・ヴィトンといった小さな港町にはおよそふさわしからぬ高級ブランドの店が軒を連ね、ハウンドやテリアやよく手入れされた犬たちを連れ、道行く人も何気に品のよさを漂わせているようだ。
良太の胸の内とは裏腹にアスカはすっかり加絵と意気投合したようで、もう彼女のデザインで作ってもらう服の話をしている。
その日は明日の撮影に備えて、夜までにはホテルに戻ったのだが。
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