Vacances22

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「何だ、デマかよ?」
 井上は苦笑する。
「いや、実を言うと事実なんだな。そりゃ駆け引きでしょ。達也は自信満々で、金にならないなんてこれっぽっちも考えちゃいないよ。その代わり、ヒットしたらそれなりに上乗せしてもらうことになってるから、良太ちゃんも期待してて」
 暖簾に腕押しのようなのらりくらりの藤堂のセリフに、良太は青くなったり赤くなったりだ。
 え~~、んな~~~~! 俺とんでもねー役引き受けたんじゃん!
「しっかし、それこそ自家用機だのポルトフィーノにヴィラだの持ってるような大富豪の孫なんか、何もそんな危ない橋渡ってまで仕事する必要ねーじゃん。ギャンブルじゃねーんだぞー!」
 イッポーリトと話している河崎をチラリと見ながら、井上が藤堂に詰め寄る。
「それは大きな間違いだよ、井上くん。働かざる者喰うべからず! 鉄則だね。人間の基本だよ」
 藤堂はちっちっと指を振ってみせる。
 ありがたいお説教のようなセリフに、良太も井上も頷かざるを得ないのだった。
 
  
 

 
 
 イッポーリトもエンツォもそれぞれ女の子連れだったが、いつのまにかエンツォは女の子を放ってアスカと良太に近づくと、滑らかな英語で話し掛ける。
 食べ物や飲み物を二人に持ってきてくれたり、日本に旅行した時のことを面白おかしく聞かせたりと、こいつはとっつきやすくていいやつだ、と良太が思い始めた頃。
「ここだけの話」
 エンツォが顔を二人に近寄せた。
「高広と加絵が密会してるとこ、見ちゃったんだ」
 良太は息を呑む。
「俺まだ高校生だったけど、その頃オヤジも女何人かいたし、結局加絵に惚れてたし、加絵も高広が日本に帰ってから少し落ち込んでたけど、何かあの二人、いいセンいってると思わないか?」
 え………
 無論良太の知らない話だ。
「昔の話でしょ。工藤さんの相手なんか、それこそ両手の指じゃ足りないわよ。二人とも割り切った遊びでしょ?」
 アスカがびしっとエンツォに言い返す。。
 昔のこととはいえ、二人がただのクラスメイトではなかったという事実は良太にはガツンとくる話だった。
「どうせなら、ここに泊まればいいのに。部屋はいくらでもあるよ」
 エンツォは言ったが、スタッフ一行はそれを丁寧に断って、ジョヴァノッティ家のクルーザーでサンタ・マルゲリータ・リグレのホテルに向かう。
 工藤も一緒だと確認して、良太はほっと胸を撫で下ろした。

 


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