シャンパンに負けないスプマンテの味わい。
最高級のエクストラバージンオリーブオイルを使ったトロビエッテのバジルソースやとれたてのシーフードをふんだんに使った料理が振舞われた。
「エー? 加絵が焼いたの? このパンすんごくおいしい!」
女優がそんなにバクバク食べていいのか、と心配したくなるほど、アスカはおいしいおいしいと目の前の皿を平らげていく。
加絵は料理のデザインも得意らしい。
目一杯豪華なディナー。
だが良太は、何を食べても味がわからなかった。
加絵のあの目は一体何を意味するのか?
良太は気分がすぐれないと、右隣に陣取っているエンツォにこっそり先にホテルに戻りたい旨を告げた。
すると、じゃあ、自分がクルーザーを出そうとエンツォが言った。
「どうした?」
立ち上がった良太に左に座っていた井上が声をかけた。
「ちょっと気分悪いんで、先に帰るよ、俺。エンツォが送ってってくれるって。あとで工藤さんに言っておいてくれよ」
向かいに座っていたアスカが二人のこそこそ話に気づいて、指で井上を呼ぶ仕草をする。
「良太、どうかしたの?」
「具合悪いから先帰るって。エンツォが送ってくってよ」
それを聞くと、アスカはすかさず言った。
「あんたも一緒に行って」
「何で?」
「エンツォって女ったらしだけじゃなく、男もいけるんだって」
「って、おい、またかよぉ、良太~~」
井上は頭を抱えた。
何も考えたくなくて、良太はホテルの部屋に戻ると部屋のバーにあったブランデーをラッパ飲みして、ベッドに潜り込んだ。
どのくらい経ったか、ノックの音に気づいた。
さらに「良太、開けろ」という声。
「……工藤…さん?」
良太はふらつく頭で起き上がると、ドアを開けた。
「寝ていたのか? 悪かったな。大丈夫か?」
「戻ってきたんですか? 俺、てっきりヴィラに泊まるんだと思ってた」
「何?」
そんなことを言うつもりはなかったのに、口から勝手に言葉が飛び出す。
「加絵さんと、すんげくいー雰囲気だったし、加絵さんて、高校のクラスメイトってだけじゃなく、つきあってたんでしょ? 前に」
「昔の女が、お前に何の関係がある?」
冷たく言い切られて、良太はカッと頭に血が上る。
「より戻すんじゃないんですか? それに加絵さん、言ってましたよ。あんたがどんなに否定しても、周りはあんたの背後にある生い立ちを見逃してはくれない。鴻池さんがいなかったら、仕事も続けられたかどうかわからなかったって! あんたは日本を出た方がいいとも言ってた。アメリカでもヨーロッパでももっと彼自身を認めてくれるところで仕事をするべきだって」
工藤は苦々しい顔で聞いていたが、フンと鼻で笑う。
「俺の生き方に、誰の指図も受けん」
「俺も、俺だって鴻池さんに言われた。CMの評判がよければ、ドラマにも出してやるって」
止まれ、俺の口!
心の指令とは裏腹に、ぺらぺら勝手に飛び出す言葉。
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