「やだ、仲間割れ? そういえば、スキーに来てた麗しの茶道の若先生は?」
理香が思い出したように聞いた。
「仕事です。茶道の若先生はサブで、本業はクリエイターですから」
きっぱりと良太は答えた。
「ああら、残念。またお会いしたかったのに」
理香が大仰に肩を竦める。
「なかなか軽井沢くるような暇ないんです」
「良太ちゃんは暇なの?」
ちょっとムッとした顔で良太は理香を見た。
「違いますよ、社長のお供で仕事です」
とはいうものの、良太にしてみればそんなに仕事という感じもない。
速水と理香は今度は調理係の京助のところへ行って、からかおうという魂胆らしい。
工藤を振り返ると、まだ何やら紫紀と話し込んでいる。
まあでも、工藤には多少は骨休めになればいいんだけど。
ここずっとちゃんとした休みとかなしで動いてるよな。
「ああ、そっか、工藤さんのバースデイサプライズとか?」
「え………」
良太は思わず千雪を見つめた。
やっぱ知ってるんだ、工藤の誕生日とか。
確かに来週工藤の誕生日だが、おそらく京都だ。
「あ、いや、工藤さん、そういうの別に、あんまし喜ばないと思うし」
俺からプレゼントとかって、何か……な。
「良太の誕生日には工藤さんから何かもろてるんやろ?」
「はあ、まあ、社員ですし、一応。俺は、年二回、お中元とお歳暮はあげてるし」
もぞもぞと良太は口にした。
「お中元とお歳暮? 何やそれ」
「だから、工藤さんの行きつけの店に、お中元とお歳暮のボトルを入れてもらってて」
酒くらいしか良太には思いつかないし、昔隣に住んでいたというニューヨークの榎木佳乃からは毎年工藤の誕生日に何かしらのプレゼントが届くが、ネクタイだったりカフスだったり、そういうちゃんとした工藤が身に着けられるものとか、良太には選ぶのも難しい。
「フーン、お中元がバースデイプレゼントで、お歳暮がクリスマスプレゼント、いうわけか」
千雪にしっかり言い当てられて、良太はちょっと赤くなる。
「だから、お中元とお歳暮ですってば」
「良太、工藤さんに対してだけは、直球やのうて、変化球やねんな、しかもかなりなトルネード」
「変な比喩やめてください。それより、いくら京助さんでも、ずっとBBQ焼いてるって、ちょ、可哀そうな気が………」
良太のところからは、京助と涼、それに大までがずっとBBQのコンロの前でひたすら食材を焼いているのが見える。
「ああ、あれな。実はああでもせんと、あちこちから女やそれに男までが言い寄ってくるから、それに対する防衛線らしいで」
「はあ?」
良太は思わず三人を順番に見やった。
「このBBQパーティ、毎年恒例言うやっちゃけど、涼は今年、まずい時に帰ってきよって、公一さんがやる予定やったんを急遽、代わってん」
涼はボストンH大に留学中だという。
「前は業者呼んでやってもろてたらしいけど、取り入ろういう女たちや、けしかけようって腹の親たちの魂胆が見え見えで、京助が嫌気がさしてついにこういう作戦に出たわけや」
「なるほど………」
良太は妙に納得できた。
モテるモテないより、こういう裕福な家に生まれるとそれなりに苦労もあるのだろう。
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