鬼の夏休み19

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「大も最近、紫紀さんてより、京助のクローンみたいになってきたやろ?」
 大学生になったという大はこころなしかスキー合宿の時より背が伸びたようで、ほぼ京助と変わらないくらいだ。
「性格は似ても似つかない感じの真面目さですけどね」
 千雪は苦笑する。
「そのとおりやから、京助も甥っ子が心配なんちゃう?」
「そっか、次の次のCEOとか?」
「いや、それはわかれへんけどな、まあ、そないなことまで考えて大をターゲットにしてくる連中もいてるからな」
「何か、大変ですね~」
 いや、でかい家なんかに生まれなくてよかったと、良太はしみじみ思う。
「そうして、いつか相続争いとかで兄弟の妻や子を巻き込んで殺人事件が起こるわけや」
 一人頷く千雪は、「軽井沢、お坊ちゃま殺人事件、何かあとひとひねりほしいな」と、ブツブツ呟く。
「千雪さん……」
「せや、お坊ちゃまと言えば、工藤さんも、おぼっちゃまやってんな。意外なことに、藤原さん、工藤一族のこと知ってはって」
 これには良太も驚いた。
「そうなんすか?」
「横浜の古くから続いた名士で地主やったらしいで。土地柄、工藤さんの曾お祖父さんいう人は、若い頃貿易会社もやってはったて。奥さんも品のええ人で、お嬢さんがまたきれいなひとやったらしい」
「え、お嬢さんてひょっとして工藤さんのお母さんとか?」
「せやな、そのまた母親のことちゃうか? 藤原さん、身寄りがなかったところを綾小路の先代に引き取られて育った言うてはったし」
「えっ、じゃあ、中山組の先代の極妻?」
 良太はちょっと声を落とす。
 そういえば、伯父が組長、とは工藤がよく言うが、祖母の話はしたことがない。
「きれいやったけど、えろ、勝気な人やったらしい」
 ちょうどその時、工藤と紫紀の話が終わったらしく、「良太」と工藤が呼んだ。
「あ、はい!」
 良太は千雪に、あとで聞かせてください、と言いおくと、工藤のところに行った。
「俺はそろそろ帰るが、お前はまだいたければいいぞ? タクシーで帰るし」
「あ、いや、じゃあ、俺も帰ります」
 時間はあっという間に過ぎて、九時になろうとしていた。
「千雪さん、俺、帰りますけど、また話聞かせてください」
 良太は帰りがけ、千雪にこそっと言った。
「ええよ。明日はまた来るんやろ?」
 すると良太は眉を顰めた。
「まあ」
「ほな、服、買いに出た時でもどっかでお茶しよか」
「服、ですか……」
 はあ、とため息をついて、良太は「じゃあ、ラインします」と言った。

 


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