こういう時、昔ならつい煙草に手が行くのが常だったが、最近は自分だけでなく周りにも害があるなどと言われて、禁煙までは行かないが、ポケットに煙草を入れるのはやめている。
「さあさ、座って下さいな、ほら、ぼっちゃんも」
良太は吹き出しそうになるのを何とか堪える。
ダイニングに行くと、工藤はさらに苦虫を噛んだような顔で、それでも良太の向かいに座った。
しかし、杉田がトレーに載せていた直径二十センチはある、生クリームとイチゴをふんだんに使って飾りつけられたショートケーキをテーブルの真ん中に置いた時、さすがに工藤は絶句した。
「ぼっちゃん、もうすぐお誕生日でしょ? ケーキも久々焼いてみたんです」
ニコニコと杉田は言い、皿とフォークを二人の前に置いた。
ケーキの上には板チョコレートにホワイトチョコでHappy Birthdayの文字が書かれている。
「お茶をお持ちしますね」
良太はニヤケそうになるのを必死で堪えるのだが、どうにも顔が緩みそうになる。
「あ、俺も、母親がいつも焼いてくれましたよ、誕生日にケーキ」
とりあえず何か言った方がいいかと良太は思ったのだが、工藤にジロリと睨まれる。
辛うじてロウソクなんてものが立っていたりしなかったのがせめてもの救いだと、工藤の方は苦々し気にケーキを睨み付けた。
「俺も手伝ってきます」
良太はいたたまれず立ち上がり、工藤の後ろを通ってキッチンに向かう際、ポケットから出した携帯で、工藤の後ろ姿とバースデーケーキをさっと激写した。
よし!
アスカさんと千雪さんに送るっきゃないよな。
「うんまい! 杉田さん、プロ並み! ケーキ屋さんになれそう!」
ケーキを切り分け、お茶を入れた後、ポットなどを乗せたトレーを持ってキッチンに下がろうとした杉田は破顔した。
「あら、ありがとう!」
「ほら、工藤さんも、ちゃんと味わって食べないと」
余計なことを言ってまた工藤に睨まれた良太は、ケーキを食べることに専念する。
すると一口二口食べたケーキの皿を工藤はいつものように良太の方へ押してよこした。
「さすがにダメですよ、だって、バースデープレート乗っかってるし」
「俺にはもう限界だ。早くしろ。ケーキの上にそんな甘ったるいチョコなんか食えるか」
工藤も嫌いだからと言って食べずに杉田の気を悪くするような真似はできないのだ。
仕方なく良太はそのチョコレートプレートをさっと取って齧るのだが、キッチンから杉田が出てくる気配に慌てて全部を口に入れた。
工藤は慌てて皿を自分の方に戻す。
「お茶、お代わりいかが?」
紅茶を入れ直したポットを持って戻ってきた杉田が聞いた。
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