良太を見つけた工藤は険しい顔をしたが、すぐに表情を戻して、話に戻った。
「ああ、いいところにきたね。浜村さん、青山プロダクションの広瀬くんです」
紫紀が良太を認めるとすぐに二人の男に紹介した。
浜村と呼ばれた男は五十代くらいだろうか、穏やかな顔つきのスマートな男だった。
その横にいるのは少し若い感じのガッシリタイプの男である。
「広瀬くん、こちらは京浜ホールディングスグループの浜村会長と渡良瀬社長です」
「初めまして、広瀬と申します」
すかさず良太はポケットから名刺を取り出して、二人と名刺を交換する。
「おや、プロデューサーをやっておられる」
浜村がにこやかに尋ねた。
「はい、まだまだ若輩者ですが勉強しながら仕事をやらせていただいております」
良太ははっきりとした声で答えた。
「いや、なかなか将来楽しみな社員さんをお持ちですね、工藤さん」
「ええ、私が外に出ることが多いので広瀬が社の方を切りまわしております」
工藤も真面目な顔で言った。
「なるほど、懐刀というわけですね」
紫紀が工藤に紹介しようと言っていたのがこの二人だろうと良太にもわかった。
石油産業の分野では日本で五指に入る京浜ホールディングスだ。
あれ、そういえば、さっき理香さんに紹介されたチャラそうな男が京浜ホールディングスで浜村とか言わなかったっけ?
「新しいドラマ制作を進められているとか?」
「ええ、まだ来年以降の話ですが」
浜村に聞かれて工藤が答えた。
「次は難しいものではなく、娯楽というか、アクションなんかも入れた楽しめるドラマだそうです」
紫紀が付け加えた。
「ほう、アクション、いいですね。メッセージ色の強い、難しいドラマもいいと思いますが、どうせなら嫌な日常を忘れて楽しめるものがあってもいいですね」
浜村は少し前のめり気味に頷いた。
渡良瀬は微妙に笑みを浮かべながら、話を聞いている。
浜村さんはかなりいい感触だけど藤田さんみたく、ノリで突っ走るタイプかもな。
渡良瀬社長はちょっと曲者っぽい。
突っ走り気味な会長の後ろで、冷静に工藤をどう見極めようか迷っているってところか。
良太はざっと二人の雰囲気を見てとった。
まあ、工藤の出自も無論知っているだろうし、ただ、東洋グループCEOがバックアップしているというところで、思案のしどころなんだろう。
紫紀がキレものだということも当然わかっていることだろうし、その紫紀が後押ししている工藤という男を、充分吟味する必要がある、ってとこか。
良太は話を聞きながら、二人の男を観察していた。
「広瀬さんは新しいドラマについて、どう思われます?」
いきなりそれまで黙って聞いていた渡良瀬のフェイントだ。
「ええ、脚本家の先生が随分気合が入っておられるようですし、どんなものになるのか私も楽しみなんです」
良太は口にできる限りの優等生的な答えを返す。
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