Act 4
除夜の鐘を聞きながら、やがて祖父や祖母、奈美が先に休み、頑張って若い者たちに付き合って飲み交わしていた文也もそのうちこっくりこっくりと舟を漕ぎ始めたあと、純と享の兄弟、信道とケンの四人は初詣に出かけた。
道中、日本のことでは知らないことばかりで、人気アニメの話から始まってアイドルやミュージシャン、好きな音楽のことから信道が最近告白して玉砕した近所の年上の女の子の話まで三人は思いついたことを片っ端から教えてくれた。
ケンはMLBで活躍している日本の選手の話題から、聞きかじりやネットなどで日本について仕入れたことを色々と聞いてみた。
「野球はね、父が好きだったから休みには子供の頃からスタジアムに連れて行ってもらったよ。だからきっすいのメッツファンなんだ」
「メッツなら、最近ピッチャーの大石とか、昔なら野茂とかいたよな」
「ああ、そうそう! もらったサインボールちゃんとあるよ」
懐かしい名前にケンの脳裏に子供の頃の思いが蘇った。
「いいな! 俺は巨人ファンだけど、兄貴は捻くれてっから弱小ヤクルトファンでさ」
「弱小は余計だ!」
ぺしっと純は享の頭をはたく。
「ってぇな、ホントのことだろ!」
「アメリカってサッカー人気?」
信道が思いついたようにケンに聞いた。
「サッカー、最近急激に人気上がってきたよね、男子サッカー」
純が通訳するまでもなく、サッカーは理解できた。
「やっぱ、アメリカってメジャーリーグとかNBAとかが国民的人気?」
享も口を挟む。
「アメリカ全体でいえば、NFL、アメリカンフットボールがダントツかな。カレッジリーグから人気あるし。それからMLB、NBA、NHLってとこかな」
「アメフトかぁ。よくわかんないんだよね、俺。NHLって?」
小首を傾げながら享は言った。
「アイスホッケーだ。そんなことも知らないのか」
代わりに純が答える。
「んなもん、みたことねんだから、知るかよ。オリンピックとかしか見ねぇし」
享は純に言い返し、またケンに向き直る。
「アメリカってF1とかどうなん?」
いきなり飛び込んできたF1というキーワードに、ケンは一瞬狼狽えた。
「F1も無論グランプリが開かれるくらいだけど、モータースポーツはアメリカ全体でいえば、インディとかのが人気あるかな」
日本に来ることになった時ハンスと話していた電話の内容が、すぐに蘇ったからだ。
自分でも昔F3に参戦したことがあるほど、ハンスはカーレースが好きで、彼が取締役を務めるドイツというより世界でも有数の自動車会社であるG社では、有能なチームスタッフを揃えてずっとF1に参戦している。
世界を転戦するF1だが、自国ドイツで開催予定のグランプリが契約を巡ってもたついているのをハンスは心配していた。
あれから、少しは進展したんだろうか。
「……セイ・リワーノフって、アメリカにいんだろ? 確か」
少しばかりまたハンスのことに思いが飛んでいたケンは、気になる言葉にはっとする。
「ネットで見たことあるけど、モデルとかはべらせてる派手なヤツでさ、でも、何かハンドル握らせるとすげぇってか、何年か前、アメリカで優勝したのにそれっきり、レースとか出てこねぇし、今、あいつ何やってんの? もうレースとかやんないのか?」
享はF1のファンで、レーサーのアロンソが好きらしいと純がケンに通訳する。
「なんだけど、二、三年前アメリカグランプリで優勝したリワーノフってレーサー、そん時の走りがすげかったって。あいつ今何してんのって。リワーノフなら俺も知ってる。どっちかってとセレブと派手な写真とかのが有名じゃん。モデルとかこないだ年末は、アマンダ・クーパーとかとイチャコラしてたし」
眉根を顰める純を見て、ケンはついくすりと笑ってしまう。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
