途端、ロジァがげらげら笑い出した。
「ジョーのやつ、ケンに会いたくて突進して画面消しちまったぜ」
「千恵美や享や純や、ご家族みんなで来てもらっても、ケンの家なら全然大丈夫だから、ぜひニューヨークにおいで」
笑い転げているロジァの代わりにアレクセイが言った。
「わあ、絶対行きます! ケン、よろしくね」
「ああ、もちろん」
苦笑しながら、ケンも頷いた。
その時、ケンはふと、ハンスが妙に静かなことに気づいた。
いつもなら賑やかなはずのハンスは窓辺に立って笑みを浮かべていたが、ケンは何となくさっきから視線を合わせないようにしている気がした。
ひょっとしてもう、愛想が尽きたってとこかもな。
何せ俺が煮え切らなすぎるし、舞い上がっていた気分が我に返っていい加減冷めたのかも。
俺だけハンスのジェットに乗らないとか言うとこじれてしまいそうだし、これはありがたく乗せてもらって、友達としてこれからもつき合っていけるようにしておかないと。
時間が経てばまた元のように話せるようになるさ。
ブリュンヒルデはどんな思いでハンスとの別れを決めたのだろう。
ハンスがアレクセイを愛しているから別れたということなら、彼女自身はまだハンスのことを愛しているのではないだろうか。
きついな、それ。
十一時を過ぎたところで、純がそろそろ帰ると言った。
みんなでホテルのエントランスまで三人を送って行った。
「じゃあ、明日、一度伺うから」
ケンは純に言った。
「タクシーの支払はこちらに請求してもらうように言ってあるから、気にしないでちゃんと千恵美を送ってくれ」
ハンスが純に告げた。
「ありがとうございます」
「ケン、また連絡します」
千恵美はちょっと目を潤ませていた。
「ああ、真美さんによろしく」
三人を見送ったあと、ケンはちょっとぼんやり突っ立っていた。
「ケン」
ロジァが呼んだ。
部屋がある場所が違うため、ハンスとはロビーで別れ、ケンとアレクセイ、ロジァは少し歩いて別のエレベーターに乗り込んだ。
一階下の階でエレベーターを降りる時、アレクセイはケンを振り返った。
何か言いたそうな顔をしていたが、ケンはお休みと言った。
自分の部屋に戻ると、ケンはふうっと大きく息をついた。
何をする気にもなれず、そのまましばらくベッドに寝転がった。
「なんか……疲れた……そういえば、タクシー代もハンスに払わせたみたいなのに、まだ礼も言ってないな」
普通に会話がしたいけど、何となくぎくしゃくしている。
明日のフライト、ちょっと気が重いかも。
そんなことを考えながらうとうとしたケンだが、はたと起き上がると、シャワーを浴びてバスローグのまま窓辺に立った。
日本での最後の夜か。
しみじみ東京の夜景をみたケンは、ちょっとした感傷に浸りつつベッドに入った。
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