笑顔をください10

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 くっそ、何で邪魔するんだ! しかも昼休みだぞ!
 イライラしながら生徒会室のドアを開けた志央を、三人の男が待っていた。
「どうやら、賭け以外でも退屈の虫退治の仕事がまたやってきたようだぞ」
 幸也がさも面白そうな口調で言う。
「嬉しそうに言うな。何かあったのか? 極力顔を合わせない約束だぞ」
 不機嫌さも顕に、志央は男たちの顔を見回す。
「奥田もやっぱり転校したぞ」
 じっと難しい顔で立っていた男が腕組みしたまま、ぼそっと口にした。
「転校?」
 三月末に一年生の奥田がイジメグループに暴行され、金を巻き上げられようとしていたところへ乗り込み、五人の生徒を捕まえたのは実は志央と幸也、それに今ここにいる二人だった。
 イジメが横行している、しかも組織的で、かなり由々しき事態になっていると知ったのは一年程前になる。
 ある生徒が転校していった後に、その原因はイジメで、他にもイジメを受けている者もいるらしい、しかも剣道部員の中にイジメのグループがある、という噂が流れた。
 当時、剣道部副主将大山は怒り、単独でイジメグループを追っていた新聞部員の西本に協力を依頼し、秘密裏に調べ始めた。
 二人とも志央や幸也と同じく学園に既に十年以上はどっぷり浸かったエスカレーター組で気の知れた悪友といったところだ。
 これまでに背後で誰かがイジメグループを操っているらしいことはわかったが、なかなかその黒幕は尻尾を出さない。
「うちの剣道部でリンチした事実はきっぱりない」
「剣道部員が黒幕ってのは、デマか? 篤郎」
 幸也がからかうように、無愛想な表情を隠そうともしない大山に訊ねる。
「おそらく本物の黒幕が流したんだろう。クッソ…」
 志央は舌打ちした。
「剣道部の活躍を嫉むやつらというセンもないことはないが」
 剣道部はインターハイの常連で、学園がバックアップする一番手になる。
「フン、そうだ。主将以下みんな、今度の大会にかけてる。つまらんイジメなんかで自分から出場停止にするようなバカが、うちの部にいるもんか」
「なるほど」
 幸也が頷く。
「実は奥田を家まで訪ねたけど、門前払いくいましたよ。俺が新聞部員だということで、奥田は警戒してるんだ」
 そう報告する西本は二年生だがメガネをかけた大柄な生徒だ。
「そうか」
 志央は難しい表情を崩さず、無造作に髪をかきあげる。
「こないだの連中シメても、やつらを操っているヤツが誰だか結局吐かなかったからな」
 大山が唸るように言う。
「正義の味方『裏番』の次の出番はいつだ?」
 幸也がボソッと口にする。
「やめろ、幸也」
 志央は幸也を睨む。
「何で? まさか盗聴なんかされちゃいないさ」
 先日、七海の口から『裏番』などという言葉が出てきた時、志央は焦った。
 この四人でマスクやサングラスなどで適当に顔を隠し、これまで何回かイジメグループと見極めた連中を現行犯でつるし上げ、口を割らせようとしてきたのは事実だ。
 始めは面白がってやっていたところもある。
 西本は柔道部員でもあるし、大山と幸也は幼い頃から剣道と空手の道場ではライバル同士と、三人はそれぞれ腕に自信がある。
 志央もピアノやお習字の他に合気道まで、祖父に無理やり習わされていた。
 もっとも志央の腕などそれほど役に立つものではなかったが。
「いつのまに誰が言い出したんだ? 『裏番』なんて。俺はただ、学園が面倒なことに巻きこまれるのがごめんなだけなんだ」
 そんな輩が学園内にいるってだけで、目障りなんだ、志央はイライラと口にする。


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