トロいやつをちょっとイジメてやろう、くらいは子供の頃の自分を思い起こせば志央にも十分思い当たる。
だが、それがエスカレートし、暴行にまで至るその経緯が理解し難い。
二人ほど逃げられてしまったが、今まで締め上げた連中は八人ほどだ。
何を聞いても答えないし、そのうち三月に掴まえた五人は調べてみても成績はそこそこだが教室では目立たない生徒ばかりだ。
いったい何の得があって、イジメなんかに荷担しているのか。
もっとも彼らは下っ端のグループで、本当に黒幕を知らないのか。
だが、あとの三人は、いつぞや七海を取り囲んで小突いていた連中と同様、授業についていけなくなったクチだが、殴られてもへらへらと開き直っているだけタチが悪い。
学外の似たような連中ともつるんで遊んでいるようだ。
彼らが他の五人を暴力で押さえつけているのかもしれない。
クソ…、これ以上、イジメグループなんかのさばらせてたまるか!
志央の中では気がせくばかりだ。
そういえば、七海も子供の頃イジメられたっていってたな。
イジメられた側の感情もイジメられたやつじゃないと本当のとこはわからないよなー。
小学校の時、実は裏でこそこそ七海をイジメていたという、友達面して近づいたクラスメイト。
友達面して近づいて……
何か…、それって、この辺に徹えないか?
志央は上着の胸のあたりを無意識に掴む。
俺って実は、七海をイジメたガキや裏で糸引いてイジメやらせてる黒幕とご同類……?
「とにかく、もう少し様子を見るしかないな」
大山が言うと、それぞれ探ってみるということで解散した。
「こんな事態だし、賭けはナシにしてやってもいいんだぜ? 潔く、携帯よこせよ」
大山と西本が生徒会室を出て行くと、幸也が言い出した。
「それとこれとは別。お前こそ、自分がうまくいかないもんだからそんなこといってるんだろ? こっちはうまくいってんの。誰がやめるか」
幸也の妥協案に、志央はついムキになって反論してしまった。
うまくいってる。
確かに。
あっというまにお友達になり、週末は家に来ると言う。
にしても、オトすってことは、キスすんのかー、あいつと? んで、証拠写真だとー!?
だがしかし。
ちくりちくりと志央の胸を刺すのはやはり後ろめたさという名の虫だ。
気のいい七海を騙しているのだという。
クソ、何を躊躇ってるんだ? 携帯のためだ、ようし、一気に決めるぞ!
そうだ、こっそりカメラを設置しとかなければ、と志央は後ろめたさに無理やり蓋をした。
「藤原、ちょっといいかな」
さあ、昼やすみだっ、と風呂敷包みの二人分、いや三人分ほどもありそうな弁当を抱え、ダッシュしようとしていた七海は、クラスメイトの堺勝浩に声をかけられて、足を止めた。
肉じゃがが思った以上のできだった。
志央は煮物が好きみたいだし、と、七海は早く志央の喜ぶ顔が見たかったのだが。
「藤原、どういうつもりで会長とつき合ってる?」
頭の中は志央の元に行ってしまっている七海を廊下の柱の隅まで引っ張っていくと、勝浩は聞いてきた。
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