あいつら…!
志央の横をすり抜けて逃げたのは、確かに以前掴まえたタチの悪い方の三人だ。
「おい、大丈夫か?」
七海は足元にうつ伏せに倒れている男子生徒に声をかけた。
生徒は顔を上げた。
「お前、近藤…?」
殴られて腫れ上がり、鼻血だか、傷口からの出血かわからない血まみれの顔になっている。
だが、その近藤という二年生は、三月末に奥田を袋叩きにしていた五人のうちのひとりだったはずだ。
仲間割れか?
志央は近藤を見据える。
「このまま見過ごすわけには行かない。理由は何だ?」
近藤は志央の質問にもうんとも寸とも言わず、ぺこりと頭を下げ、足を引きずりながら立ち去ろうとする。
「おい、待てよ、そんな、やられ損でいいのかよ!」
近藤の腕を掴み、七海が怒鳴りつける。
激昂する七海など志央は初めて見る。
近藤は七海の手を振り払い、二人に背を向けて屋上から去っていった。
「まったく…」
志央は一つ大きく息をつく。
「イジメに反応するってのは、こういうことか」
「はあ、イジメられてるやつ見ると身につまされてほっとけなくて、つい……。妹にも喧嘩するな、って約束させられてたんですけど、実は三学期の終わり、イジメの現場に出くわして、ちょっと腕ねじ上げただけなんですけど、相手、骨折したらしくて…」
へへへ、と照れくさそうに笑う七海はいつもの七海だが。
子供の頃からやっていたというのが氷上の格闘技だ、それは骨折もするだろう。
志央は呆れて七海を見上げた。
「それか。転校の原因」
「はあ、すんません。そんで妹との約束破ったバツに丸刈りに…」
志央はふき出す。
「俺はカナダではやってたのかと思ったぞ」
「からかわないで下さい。でも、志央さん、あいつのこと、知ってんですか?」
「ん? …まあな」
近藤も口を割らないだろう。
志央は心の中で呟いた。
そしたらおそらくもっとひどい目にあうのがわかっているから。
だがこのまま見過ごすわけには行かない。
何とかしなくては。
「生徒会でもいろいろ考えてる。奥が深いらしい。いくら見てられなくても、お前はもう首突っ込むなよ?」
志央は七海を諭すように言った。
「はあ、でも…」
「また転校させられたくないだろ?」
「はあ…」
「約束しろよ。お前がいなくなったら、俺も困る」
納得いかないという顔の七海に、志央はとっときの笑顔とセリフを向ける。
何が困るのか、志央にもわからない。
けど、こいつを巻き込みたくない、と漠然と思う。
「…約束します」
歯切れは悪そうだが、志央の笑顔効果で七海は茹蛸のように真っ赤になった。
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