キスなんて遊びでいくらでもしたことがあるのに、こいつのキスって何かいいかも……、なんて思ったのもつかの間、七海の手が志央のシャツの中に滑り込む。
「はっ…やめろ…!」
一気に目が醒める。
「やめろってるだろっ!」
声を上げた志央に、七海も一旦手を止める。
が、ここまできちゃってる十七歳の男に今更やめるなんて無理な話だ。
「なんで? 好きなのに…」
荒い吐息で七海が呻き、再び唇を襲う。
何言ってるんだ! このやろう! 違う!
食いつくようなキスに息ができず、バシバシと志央は七海の肩や胸を叩くが、七海の体はびくともしない。
どころか抗う志央のシャツを背中に回した手で後ろへ引きおろした。
ボタンがいくつか弾け飛び、志央の腕はシャツの中で動けなくなる。
力でねじ伏せてくる七海に恐怖を感じて、ひと時離れた唇の下から志央は必死で喚く。
「離…せ…!」
七海の耳に入るわけがなく、志央の太腿の間に割り入った膝をぐいぐい押しつけながら、顕になった志央の首筋から胸へと唇を這わせる。
「……ッ!」
胸の突起に七海の舌先が触れた途端、思いもよらぬ甘い痺れが走り、志央は身を震わせた。
そのまま二人の体はもつれながらソファからずり落ちる。
七海は志央の体にショックを与えないように腕で支える気遣いは見せるものの、上気し、艶めいた志央の表情にたまらずわずかに開いたその唇を塞いだ。
妙に巧みなキスに翻弄されているうちに、七海の手は志央の下肢へと伸び、いつの間にか手際よくはずされていたファスナーの中に忍び込む。
「いや…っ…! 七海…ッ…」
七海の指が間断なく与えてくる抗い難い甘美な刺激に流されそうで、志央はかぶりをふって身悶えする。
「志央さん…メチャ、色ッぺー…」
「あっ……あっ………!!」
耳元の七海の声が脳に届いた途端、勝手に声が上ずって頭の中が真っ白になった。
一瞬の空白から志央が目を開けると、心配そうに覗き込む七海の顔があった。
「志央さん…あの…」
羞恥と怒りを一緒くたにして、志央は思い切り七海を突き飛ばした。
こいつ、こいつ! 調子に乗りやがって。
キスにほだされちまうなんて!! 何で、俺が、こいつに、いかされなくちゃならないんだっ!
「す、好きなら、突っ走ればいいってもんじゃないだろ?」
「す、すみませんでしたっ!」
「……てけ…、出てけ、出てけっ!!」
七海は目一杯うな垂れて、それでもまだ名残惜しげな顔で口をへの字に曲げ、顔を見ようとしない志央の背中にぺこり、とひとつ頭を下げドアの向こうに消えた。
志央は思わず傍にあったティッシュの箱をドアに向かって投げつける。
クソ! 写真なんか撮れるかよ! あんな状態で!
こっちが手玉に取るはずだったのに、クッソォ! あのヤロウ!
ま、まあ、男だし…。あのくらい…減るもんじゃなし。
ソファに背中をあずけたまま、足を投げ出し、志央は頭をかきむしる。
何だよ…、何がひっかかってんだよ…。
さっきから頭を占めているもやもやした説明できない感情に自問自答する。
キスも…いやじゃなかった。
ってより…
だから何だってんだよ、俺は……。
宙を見つめたまま、しばらくぼんやりしていた志央だが、ハーブのやけに鮮やかな緑色に気づくと、大きな身体をかがめて葉を摘んでいた七海を思い出して知らず苦笑していた。
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