銀座の中央通り沿いには海外ブランドの直営店が立ち並んでいるが、いよいよイタリアのトップブランドの一つ、サンドロ・ミランドラまでが進出してくることとなった。
並木通りについ先日完成したミランドラのビル自体が芸術的で、直営のレストランやティールームも入っている。
現在ロケをしているドラマとのタイアップで出演者がこぞってミランドラを身につけているのだが、ビルの最上階にあるレセプションルームで行われることになっているプレオープンレセプションには、タイアップを取りつけた工藤にも招待状が届いていた。
アスカも少し前にそのことを騒いでいた気がするが。
だがてっきり工藤はそんなものはうっちゃっておくだろうという良太の予想に反して出席し、しかも良太まで連れて行くという。
「あのオヤジ、また何か企んでやがるな」
キーボードを叩きながら良太は呟いた。
「よう、馬子にも衣装ってのはこのことだな、良太」
まさかこのブランドのレセプションパーティで、アスカ以外に良太に親しげに声をかけてくるものがいるとは思わなかった。
「昨日のゲームで三振の山築いてたくせに、こんなとこで油売ってていいのかよ、沢村」
「相変わらず痛いところをついてくれるね、良太ちゃん」
沢村はにやつきながら、良太の着ているスーツのチーフをいじる。
「なるほど、こんなところで待ち合わせてデートとはな。そのためにミランドラなんか新調しちゃって」
「るさいな、俺は仕事だ。このパーティに出るからって工藤に無理やり着せられたんだよっ」
昨日即行でミランドラの入っているデパートに買いに行った良太は、工藤の言いつけどおり、店員に見立ててもらったスーツ三着の中から、昼にやっと戻ってきた工藤に今夜のこのスーツを選んでもらったのだ。
「いやいや、なかなか似あってるぜ」
「お前こそ、やけに機嫌いいじゃん、三振してた割には」
「何とでも言え。この後、飲む約束なんだよ」
良太ははっと思い当たって場内を見渡してすぐ、佐々木と直子の姿を見つけた。
池山直子は、昨年独立してオフィスを構えた佐々木の有能なアシスタントで、一見ふわっと可愛い系だが、佐々木の仕事のサポート役としてのみならず、佐々木のワードローブコーディネイターと言っても過言ではない。
そう言えば、と、ドラマのメインCMは代理店プラグインが請け負い、佐々木がクリエイターとして仕事に携わっていたのを良太は思い出した。
直子曰く、モデル体型だという佐々木は、ミランドラのスーツをすんなり着こなし、その辺のモデルを圧倒して今夜は一段と麗しい。
やっぱり沢村には全然もったいない、と良太は一人頷く。
「そういや、どういう意味だよ、その待ち合わせてデートって」
「とぼけちゃって、この! 市川美由だよ。そういや彼女の親ってどっかの企業の社長だったっけ。逆玉いけるかもよ?」
「うそ…彼女来てるのか?」
それこそ寝耳に水だ。
あんな雑誌に載ってしまったことを、彼女に何と言って謝ろうかと思いつつ、その機会がないままになっている。
週刊誌に写真が載った日、案の定昼休みには妹の亜弓やかおりから携帯にじゃんじゃか電話が来た。
出ないでおいたら留守電にどういうことだとメッセージが入っている。
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