夢のつづき15

back  next  top  Novels


 一旦地下に降り、長い通路を抜けると先に事務所のドアがあり、その向こうに地上へ出る階段があった。
「お疲れ様です。こちらです」
 階段の中ほどで中井が呼んだ。
 地上に出ると、日が落ち始めた小さな庭の木陰から白のレクサスの後ろが見えた。
「良太、もう帰っていいぞ」
 工藤はもう一度言った。
「ええ、帰りますよ」
 そう言いながら、良太はあたりに目を配り、二人の後ろから車まで着いて行った。
「どうぞ」
 中井が後部座席のドアを開けたので、良太は下がって二人が乗り込むのを待った。
 その直後、ガサガサっと音がした。
 かと思うと、影が飛び出してきた。
「きゃああああっ!」
 芽久の悲鳴とともに、影は工藤に弾き飛ばされた。
 あっという間の出来事に、良太は一歩遅れたものの、またすぐ立ち上がってナイフを構えた男の前に立ちはだかった。
「バカヤロ! 退け、良太!」
 工藤は怒鳴ったが、バカ力でしがみつく芽久に動きを阻まれる。
 中井は車の傍に突っ立ったまま、おろおろしているばかりだ。
「邪魔すんな!」
 血走った目を良太に向けて、岸が怒鳴る。
「目を覚ませよ! こんなバカなことやってどうすんだよ!」
 良太は二人を庇うように両腕を開いて叫んだ。
「るせぇ! るせぇ! 何だ、お前! 退けよ!」
 ナイフを振り回して岸が喚き散らす。
 工藤がしがみついている芽久を引き剥がして動こうとしたその時、岸は背後から腕をねじ上げられ、ぎゃあっと情けない悲鳴をあげると、次には足を救い上げられ地面に叩きつけられた。
 あっけに取られている良太の前に、ライダースブーツで岸の背中を踏みつけながらすくと立った長身の男。
「ぼけっとつっ立ってんなよ、早いとこ警察呼べ」
 岸の手からナイフを奪って放った男は、不遜な顔で良太に命令した。
「有吉」
 工藤が男の名前を呼んだ時、良太は我に返ったように携帯で警察を呼び出した。
 悲鳴をきいたホテルのガードマンもようやく駆けつけ、有吉が離れると暴れる岸を三人かかりで押さえつけた。
「このやろう、駐車場でうろついてて、そこのガキが車に乗り込むのを見てあとつけやがったから、こんなことだろうと思ったぜ」
 そこのガキといわれた中井は、未だに足が竦んで動けないでいた。
「ったく、へっぴり腰のくせに、威勢だけはいっちょまえかよ」
 今度ははっきりと睨むような視線を向ける有吉に、良太はかーっと頭に血が上る。
「あんたに言われる筋合いはない!」
 必死だったのだ。
 工藤を守ることしか考えなかった。
 頭で考えるよりからだが動いていた。
「戦場なら完全に犬死だ」
 フン、と鼻で笑われて良太は唇をかみ締める。
 言い返そうにも、ごもっともと頷ける言葉なのは確かだ。
 結局、岸は連行されたが、そこに居合わせた面子はホテルに一旦戻り、ひととおり事情聴取が終わって警察が帰っていくまでに一時間を要した。
「悪かったな、有吉」
 工藤が言った。
「いや。俺がどうにかしなくてもあんたがどうにかしてただろ、あんなへっぽこ野郎」
「じゃ、俺、お先に失礼します」
 二人が話しているところへ、とっとと退散しようと思った良太はそう声をかけた。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます