身体が大きいので、上下黒っぽいシャツとパンツに、ざっくりとしたジャケットを合わせた海外ブランドものもよく似合っている。
以前、直子が、沢村のことを、やぼったい野球選手の中では別格でカッコいいとか言っていたが。
佐々木はふと、沢村に見惚れてしまっている気づいて自分が恥ずかしくなる。
「七時半」
「朝飯、どないする?」
自分はあまり食欲はないが、沢村はきっちり食べないわけにはいかないだろう。
「今からホテル戻って、ダイニングで食べるか?」
「それがいいか。今からなら八時チョイ過ぎくらいにつけるかも」
「安全運転で行けや。朝飯のために事故ったりしたらシャレにならん」
フンと沢村は苦笑する。
「佐々木さん乗せてるのに、絶対事故ったりするかよ」
こんなことをダイレクトに口にする沢村が、佐々木はこそばゆい。
こんな時間がもっと続けばいいというのが本音だ。
だが、沢村は今夜はオールスターゲームがあるし、佐々木は夕方から那須高原に向かうことになっている。
どうせ自分で運転するわけではなく、ロケバスで寝て行けるだろうからいいのだが。
明日の朝も五時起きやし、栄養ドリンクでも飲まな。
「よし、八時五分!」
ハッと気づくと、車はホテルの駐車場にいた。
佐々木はいつの間にか寝ていたようだ。
「おおきに……」
シートベルトを外して降りようとした佐々木は、腕を引っ張られて沢村に抱き込まれた。
名残惜し気なキスを、沢村は繰り返す。
「もう、行かな……」
「クッソ、行かせたくないな……」
俺かて、行きとないわ。
back next top Novels