「う……るさい……なんだよ、………藤堂、人を子ども扱いして」
悠は涙をこぼしながら悪態をつく。
「子どもにはこんなことできないよ」
「…う……ああ………っ………」
突き上げる藤堂の与える刺激に耐え切れず、悠は甘く声を上げる。
藤堂に抱えられたまま美術館から屋敷に来てからもしばらく涙が止まらなかった。
服を脱がされて優しく愛撫されると、まるで全身がどこもかしこも過敏に震えてしまう。
「藤堂…………」
それでも悠はひたすら与えられる快感を享受するし、欲しがった。
長い指先にくすぐられると、体温はやけどしそうに上がり、熱いばかりのため息をこぼす。
「悠……めちゃくちゃ可愛い……」
どこかで犬の鳴き声が聞こえた。
ざわめく風が屋敷の周りの木立を揺らしても、二人が離れる気配はなかった。
パリ発のエールフランスでスケジュール通り、高津と悠は日本に向かった。
たった十日間の旅だったが、二人にとって忘れられないものをくれた時間となった。
「ティッツィアーナちゃーん!」
ティッツィアーナとしっかりメアドや携帯番号を交換したりして、うきうき気分なのは高津だ。
待ち受けで微笑む彼女の写真にキスなんかして、浮かれている。
ブスっ面は隣の悠だ。
「なーに、怒ってんだよ。また、喧嘩したのか? だんなと」
「だんなとか言うな!」
「なーにゆっちゃって、嬉しいくせに、だんなと一緒に帰れてさ」
そう、藤堂に乗せられて屋敷で一夜を過ごした翌朝、悠はめちゃ後悔した。
「何で俺ってこうもふがいないんだろ」
藤堂の腕の中で泣きまくったり。
ぜんぜん対等なんかになれっこない、これじゃ。
ウフィツィを堪能し、ドゥオーモに登り、ついでにまたアウトストラーダを突っ走って、ミラノに連れてってくれた藤堂のお陰で、今回はあきらめていた、サンタ・マリア・デレ・グラッツィエ教会の『最後の晩餐』も見ることができた。
それは嬉しい。
嬉しいのは山々だが、やはり悔しいのだ。
自分だけではそれができなかったことが。
「そんなことはない。俺が手っ取り早くおせっかいだけだろ?」
なんて藤堂は言うのだが。
「やあ、ここ、いいかい?」
そして今もまた、こうして現れる。
悠の隣は空いているのだが、どうして藤堂がそこにいるのか、というと、
「え、ファーストクラス?」
高津が叫ぶのも無理はなく、とっくに二人の乗る機を調べて、当初ファーストクラスしかないといわれて、席を確保していたわけだ。
「やっぱ、ただのあしながおじさんじゃねーよな」
悠のためにそこまでしてしまう藤堂に、遅まきながら脱帽している高津なのだ。
もっとも、ティッツィアーナがいなければ、面白くなかったかもしれないが。
そして藤堂がただのあしながおじさんではなかったことは、半年後にテレビ画面に登場したCMによって証明される。
アウトストラーダを颯爽と走る日本自動車の新車、やがて降り立った美女。
「ティッツィアーナちゃーん!」
秋口に差し掛かった頃、藤堂の部屋では、たまたま遊びに来て、テレビ画面に向かって投げキッスする高津の姿が見られた。
- おわり -
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