花びらの囁き2

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「そう、お金、あるのか? 念のために多めに持っていった方がいい。今度こそ絵の代金、ちゃんと使いなさい」
 そうである。
 藤堂が買った、はずの今このリビングのひとつの壁一面を飾っている絵は悠が個展に出品したものだ。
 だが、その代金を悠はどうしても受け取ってくれないのだ。
 曰く、『俺の絵にんな大金かけられっかよ! バッカじゃねーの?』
 個展の費用以外、他にも売れた絵はあったのだが、それも一切受け取ろうとしない。
 曰く、『あんたの企みで売れたんだから、あんたが受け取ればいいだろ』
 企みってね。
 藤堂は今まで何度、切切と説いたことか。
 しかし、絵の具やカンバス代はもらったんだし、自分の取り分は済んだの一点張りで、取り付く島もない。
 仕方なく、藤堂は絵に支払われた代金を悠名義で銀行に置いているのだが。
「だからんなもん、いらねーよ。たかだか十日、正味八日間だぜ、たったの」
「しかし……エアは? ビジネスクラスとかならラクに行けるよ」
「バッカじゃん、んな贅沢できるわきゃねーだろ? エールフランスの超格安チケット、エコノミー」
「え、あ、ああ、エールフランス、そうか」
 三個目のケーキを取ろうとした悠の手を藤堂ははたと掴む。
「何だよ」
 悠はムッとして藤堂を睨む。
「ひょっとして、夕飯食べてないな?」
「だから、今食ってんじゃん。うまいよな、これ」
「まったくケーキはご飯じゃないだろう。しょうがないな、何か作ってやるから、待ってなさい」
 これだから、と、呆れてため息を一つこぼすと、藤堂はキッチンに立った。
「気にすんなって。あんただって疲れてんだからよ」
「パスタならすぐできる」
 藤堂はパスタ鍋に湯を沸かし、冷蔵庫を覗いて玉ねぎやなす、にんにくの茎を取り出すと、手早く洗って刻んでフライパンでいため、ベーコンを刻んで加える。
 パスタがアルデンテに茹で上がると、水気をきってオリーブ油を垂らして絡め、フライパンの中の具と混ぜ合わせた。
 その間約二十分ほど。
 ほかほかと湯気のたつパスタを皿に盛ると、藤堂はテーブルでフォークを手に待ち構えていた悠の前に置いた。
「んまそー! いっただきまーす!」
 悠の向かいで紅茶をすする藤堂は、はぐはぐとパスタを平らげる顔を見つめながら、「ほんとに大丈夫かな、そんなんで」と呟く。
「……あにが?」
 パスタでいっぱいの口で悠は藤堂を見やる。
「夢中になると食べるのも忘れるだろ? 悠ちゃんは。パリやフィレンツェで腹減らして倒れるんじゃないかと心配にもなる」
「だから、高津と一緒だし」
 ごっくんと最後のパスタを飲みこんだ。

 


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