花の宴5

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「だって、谷川ちゃんってば、絶対飲まないのよ、運転するからって」
「それが当り前なんだ」
 秋山がアスカをたしなめる。
「あの人、堅いよなー、あんま笑わねーし」
 次、日本酒行こう、と俊一と競い合っている小笠原が言った。
「あ、やっぱここだ、来たぞ~良太」
 良太が顔を上げると、一際大きな男がドアの向こうから現れた。
「うお、沢村じゃん」
「ああ、良太、オトモダチ、だったっけ」
 小笠原と俊一が口々に言う。
「あ、どーもー、工藤さん、お言葉に甘えまして、お邪魔します」
「こんばんは」
「ども、お邪魔します」
 上機嫌でやってきた沢村の後ろから顔を出したのは、かおりと肇だ。
「あれ、お前らも一緒?」
 良太は驚いた。
「沢村っちから、良太くん、お花見やるから来いっていってるって。あ、これ、私たちから差し入れです」
「あら、ありがとう、わ、おいしそう」
 そそくさとアスカが受け取った袋には、チーズやハム、ワインのボトルが入っている。
「おい、良太、いいのか?」
 よそいきの笑顔を振りまいているかおりの横で、肇は怪訝そうな顔で良太を見た。
「あ、ああ、あの、俺の高校ン時の同級生で、水野かおりと飯島肇です」
 良太が二人を紹介する。
「おい、俺は?」
 沢村が要求するので、「沢村です」と仕方なく付け加える。
「美人なら、大歓迎、どうぞどうぞ」
 調子のいい小笠原がかおりを手招きする。
「さっきの、アスカさんだったんだ? 携帯」
 沢村も妙にテンションが高い。
「二人は同級生で、どうして沢村がいるわけ?」
 アスカが思ったままを口にする。
「いや、俺って良太からするとライバルだったらしくて」
「何よ、そのライバルだったらしいって」
 アスカが聞き返した。
「うっせーぞ、沢村、三振とったことだってあるんだからな!」
 聞きつけて良太が割り込む。
「そ、俺たち四人、『桜野球少年会』」
 沢村が良太の肩に腕を回す。
「勝手につけてんなって」
「何せ、リトルリーグからのつきあいだから」
 アスカに沢村が説明するのを良太が訂正する横で、小笠原と俊一がかおりや肇に良太のことを聞きだしていた。
 息子の影響で結構野球好きな鈴木さんも、まあそう、とニコニコ笑っている。
「高校球児かぁ、青春だなー」
「肇さんが主将でキャッチャー、かおりさんがマネージャー? 何、何、そこで恋はなかったの?」
「っふふ、良太くんの元カノ、でーす!」
 かおりが宣言する。
「うおおおお、それで、それで?」
 みんなの視線が俄然かおりに向いた。
「これは複雑なことになってきたんじゃないの、良太ちゃん!」
 俊一が良太をからかう。
「あらぁ、良太ちゃんの元カノ、だって、高広、どうすんの?」
 こちらも面白がってひとみが工藤の横でケタケタ笑う。
 言葉を返すのもうっとおしくて、工藤は渋い顔でグラスを空ける。

 


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