そんなお前が好きだった78

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 面と向かってどんな顔をすればいいのだろうとは思うのだが、響はそれ以上に会えるかどうかが気がかりだったのだ。
 多少ぎくしゃくするかもしれないが、少なくとも仲間としては付き合っていってくれると考えていいのだろうか。
 元気には泣きついて、いい加減決着をつけろとかはっぱをかけられたものの、とりあえず井原に会えればいいなどと思ってしまう。
「決着ったって………」
 でないと断崖絶壁ですよ!
 元気のそれこそ脅し文句がまた耳に聞こえてきそうな気がする。
 だが今更、あの時はNOと言ったけどほんとは違うんだ、なんて………。
 またしてもグダグダと考えている。
 井原のことになるとどうしてこうなのか。
 井原が関係していなければ、荒川にどうこう言われたところで、いくらでも言い返せたはずだ。
 そうしたら生徒にあんなことをさせるような心配をかけないで済んだかもしれない。
 それに、瀬戸川にしても青山にしても、俺には井原に対してどうなのか、などと聞いてもこない。
 ったくでき過ぎの生徒たちだと、響は改めて思う。
 またああだこうだ考えこんでいるうちにもう時間は九時半になろうとしていた。
「いけね、もう行かなきゃ」
 響は慌ててカップや皿をシンクに置いて、にゃー助を撫でてやってからペットゲートを閉めて家を出た。
 車を飛ばして井原の新居に着くと、黒のランドクルーザー一台だけが停まっていた。
「おはよう、響さん」
 響が車を停めてドアチャイムを押すと元気が顔を出した。
「あれ、元気だけ?」
「東と井原と豪は井原ンとこに荷物取りに行ってる。まあ、どうぞどうぞ」
 沓脱は今風というのか段差がないのもそういえばいいかもと思ったんだ、と響はスニーカーを脱いであがる。
「俺もモップ掛けしようか」
「モップが一つっきゃないから、そっちのクルクルワイパー使って」
 元気はシートを脱着させて使うタイプを示した。
「あいつ、こういう用具とか準備してないんだよな。うちから持って来てよかったよ」
「げ、俺、何も用意してこなかった」
 モップで床を擦りながら文句を言う元気に、響は言った。
「ああ、いいのいいの。俺、大抵のもの持ってきたから。あとは上拭きするシートとか買ってこないと」
 元気は気が利くというか、自分が気が利かないというか、と響はちょっと情けなくなる。
「だったら、あとで俺行ってこようか?」
「うーん、様子を見てでいんじゃね? 何か、ソファとかデスクとかでかいもんが今日届くらしいし、それまでに床だけやっとけば」
 響の提案に元気がスパッと答える。
「わかった」
「しかし、三LDKとか贅沢過ぎねえ? しかも新築戸建てで」
 片眉を上げて元気は部屋を見回した。
「でもこれで六万とか、井原、事故物件かなんて不動産屋に聞いてたけど」
 響は思い出してクスリと笑う。
「確かに。まあ、車ないと不便ちゃ不便だが、この辺りで車移動しないやつって見つけるの難しいくらいだからな」
「学校、スーパー、駅、遠いからかなあ。バス停も見かけないし」
 響も首を傾げる。
「珍しいとこに建てたよな」
「だな」
 三つある部屋のうち、四畳半はとりあえず物置にして、六畳を書斎、八畳が寝室だと、元気が説明した。
 寝室には既にベッドやチェストが入っていて、いつでも使えそうだ。
「カーテンとかはこれから調達するらしい」
 窓の外で空を雲が覆い始めるのを見ながら元気が言った。
 床を大体拭き終わった頃、車の停まる音がして、賑やかに男たちの声が聞こえた。
 帰ってきた。
 響は少し身を固くする。

 


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