はっぴぃばれんたいん6

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「えっと、モデルさんですか?」
 良太はしげしげとさやかを眺める。
「あら、そんな風に見える?」
 思わず背筋を伸ばすさやか。
「ほんとだ、んまいー!」
 浩輔も丸いチョコをほおばって、感嘆の声を上げる。
「三浦くんもいらっしゃいよ」
 さやかによばれて、はあ、と三浦も席を立つ。
 そんな雪の日の午後。
 チョコレートを囲んで和やかな時間を過ごしている輪の中からすっかり取り残された男は眉間に皺をよせ、苦々しい顔でタバコを噛んでいたが、おもむろに電話に手を伸ばした。
 
 
   
 
「お先に失礼します」
 大雪で交通機関もマヒしているし、もうあがっていいぞ、といわれて浩輔はそそくさと帰り支度をして、玄関ドアに向かう。
 チョコレートなんか嫌いな河崎のために、浩輔は今夜、やっつけだが温かいポトフなんかつくって出迎えようか、などと考えて材料はこそこそ昨日のうちに揃えておいたのだ。
 河崎のために、料理本をあさって決めたのが、大根と鶏肉の和風ポトフだ。
 今夜のように寒い夜にはもってこいだろう。
 金目だいの煮つけとか。
 それに、河崎が好きだという焼酎も何とか手に入れた。
 河崎と一緒に暮らすようになって、家賃も食費も取らない家主のために、家事くらいはと暇を見つけてやっている。
 料理もいつもではないが、休日くらいまがりなりにできるようになった浩輔である。
 いそいそと電車に向かおうとして、はたと浩輔は足をとめた。
 雪の中に街灯に映し出されている黄色いビートル、ピカピカのビートルがあるのだ。
 ほしいななんて思っていたが、まだ一度もお目にかかっていないそれが目の前に停まっていて、浩輔は引き寄せられるようにビートルに近づく。
「いーなー、まっさらじゃん。だれんだろーなー、いーなー」
 ぐるりと車の周りをめぐってフロントガラスに目を凝らす。
「え…」
 『TO KOSUKE』
 挟んであるカードに書かれた文字を何度も読み返すが、確かにそう読める。
 そういえば、出掛けに、持っていろ、と河崎が車のキーを手渡した。
 何だろと思っていたけど、まさか―――――
 恐る恐る運転席のドアにポケットのキーをかざしてロックを外す。
「うっそー、開いちゃったよーーー!」
 そういえば、五時頃だったか、あたふたと頬を真っ赤にした太った男が河崎を訪ねてきて、やたらとぺこぺこしながら、『それにしても、お昼過ぎにご用命いただいてこの時間というのは…もう少しお早くご連絡いただけると…』なんて言ってたっけ。
『何か不満があるのか?』
 河崎にジロリと睨まれて、男はまたあたふたと去っていった。
「まさかまさか、あれって…」
 浩輔は息を切らしてオフィスに再び駆け込んだ。
「おや、浩輔ちゃん、お帰り」
 すっとぼけた藤堂のセリフは無視して、浩輔は河崎のデスクに走り寄る。
「あれ、あれ…」
 浩輔は窓の外を指しながら、ちゃんと言葉が出てこない。

 


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