はっぴぃばれんたいん5

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 雪で電車が止まると困るから、帰るねー、と直子が出て行くとすぐ、浩輔と藤堂はこれはうまい、これはちょっと、とチョコレート談義を始める。
 と、また玄関が開いた。
「あっらー、先を越されたみたいね」
 ピンクの帽子や尖ったヒールのブーツでヴォーグのモデルのように颯爽と現れたのは松井さやかだった。
 やはり元英報堂の社員で、河崎や藤堂とは昔からの遊び仲間である。
「ハッピーバレンタイン!」
 にっこり笑って「これは義行、三浦くん、こっちは浩輔ちゃんね」とチョコレートらしきラッピングされた箱を渡す。
「達也はチョコレートみたいなもん、嫌いだってゆーからないわよぉ」
 どうやら河崎にはないらしい。
「開けてみてみて」
 はあ、と浩輔はピンクのリボンをほどく。
 しょっちゅうプラグインに顔を出し、何だかだと大騒ぎしていくさやかである。
 いい加減慣れはしたものの、浩輔にとってはまだまだ歓迎したくない客なのだが。
「へ…」
 現れたのは、キティちゃんをかたどったチョコ。
「浩輔ちゃんにピッタリだと思わない? あら、大丈夫よ、毒なんか入ってないから、安心して食べて」
 まさしく毒舌を吐く。
 そこへさらに来客があった。
「お~や~、誰かと思ったら、良太ちゃんじゃないか! 久しぶり~」
 藤堂が大仰に歓迎の言葉を口にする。
 ひょろっと背が高いが少年の甘さを残した顔で広瀬良太はにっこり笑う。
「ええ、二日ぶりですねー」
「今日はどうしたの? もこもこだねー」
 厚手のオーバーコートに身を包んだ良太は、バッシュをきゅっきゅいわせながら入ってきた。
「寒いですよねー! 雪だるま、かあいーですねー。藤堂さんでしょ? 作ったの」
「ご名答! さすがだねー」
 ははは、と笑う良太は、プラグインにとってはいまや大事なクライアントである青山プロダクションの社員だ。
 藤堂と良太はまた妙に仲がいい。
「バレンタインだしー、これ、藤堂さんに!」
 周りは思わず良太を振り返る。
「ほら、前にプリンいただきましたから、お返しです」
「それはうれしい! 良太ちゃんにチョコもらえるなんて」
「うちの奈々からもみなさんにって、預かってきてます。俺、買出しにいかされた時に、これみつけて。すんげく、うまいんですよ。ショコラショコラのベークド生チョコ! 伊勢越デパートにしか入ってないんです」
「ほう、どれどれ」
 ラッピングをほどき、藤堂は現れたチョコのひとつを口に持っていく。
「なるほど、んまい!」
「あら、あたし、好きなのよ、そこのチョコ」
 藤堂はさやかと浩輔の手にひとつずつチョコをのせる。

 


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