はっぴぃばれんたいん7

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「お前がほしいといったんだろ?」
 ジロリと河崎の鋭い眼差しが浩輔に向けられる。
「…………」
 だからって、だからって、まさかそんな―――
「なんか文句があるのか?」
「い…え…」
 なんだ、と藤堂が浩輔の指差した窓から外を眺める。
「おんやー、雪の中に黄色いカブトムシが鎮座しているじゃないか」
 三浦も窓まで行って、「なるほど」と呟いた。
 口数も少なく、きっちり計画を立てて動く三浦だが、この河崎の下で一年半やってきたお陰で、河崎の金の使い方は尋常ではない、いや、そもそも金を使うという行為自体問題にしていないのだという認識はできていた。
 いつだったか、急ぎの仕事でニューヨークへ往復せざるを得ない状況下、どうしてもチケットが取れなくてキャンセル待ちをしていた三浦に、たったかファーストクラスで往復席を取り、「差額は俺が出すから、とっとと行け」と送り出されたことがあるのだ。
 藤堂がにやにやと河崎と浩輔のところにやってきた。
「お前さー、野菜買うのとわけが違うんだからさ、せめて一日くらい猶予をもたせてやれよな、ディーラーも可哀相に。河崎グループの御曹司にすぐに持ってこいなんていわれりゃ、他の客断っても、調達せざるを得ないだろ? しかもこんな大雪の日に」
「るっせー、知るか!」
 河崎は取り合うようすもなく、手に持った書類を睨みつける。
「そんなー、俺があんなこといったばっかに…」
 浩輔は肩を落とす。
 嬉しくなくはないが、複雑な心中である。
 過去服から靴からいろいろなものを河崎にもらったり買ってもらったりしているが、いくらなんでも車をプレゼントだなんて、庶民の浩輔にとってはハイありがとうと簡単に受け取れる代物ではないのだ。
「達也のやつ、ひがんだんだよ。みんなやつにチョコあげないから」
 こそっと藤堂が浩輔に耳打ちする。
「え、だって、河崎さん、甘いもん嫌いだって…」
「そ。自分が嫌いだなんてぬかすからじゃんねー。ま、嫌いでも、形だけでもほしいんだよ、浩輔ちゃんから、特に」
「えー」
 って言っても、夜の八時を回っていては、デパートもとっくに終わってるだろうし。
 コンビニにあるようなチョコじゃあんまりだし。
 浩輔の頭の中でどうしよう、の文字がぐるぐるととぐろを巻いている。
「あー、何も考えずにもらっておけよ。あいつに世間の常識なんか通用しないんだから」
「はあ…」
 そんなことはよくわかっているはずだったけど。
「まあ、チョコなんかじゃなくて、もっと甘いものの方がやつも喜ぶだろ」
「え、もっと甘いものって何ですか?」
 ボソリと言った藤堂に浩輔は詰め寄らんばかりに聞く。
 マフラーを巻き、帰り支度をしていた藤堂は、「知らないの?」と聞き返す。

 


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