「さっきジャスト・エージェンシーの佐々木さんが会社に電話をよこした」
「ほう? いつの間にお友達になってたんだ? あのクソヤローと」
苦々し気に河崎が揶揄する。
「お前が掴まらねーから、わざわざ俺に怒鳴り込んできたんだ! 浩輔が昨日から休んでるって。お前、一昨日の晩、佐々木さんやキョウヤの前で浩輔かっさらって逃げたって言うじゃねーか! 何だってそんなマネ…」
河崎は苦笑いした。
「安心しろ。ストーカーはやめだ。もう、粉々ってやつ…」
「どういう、こった?」
藤堂はさらに険しい貌で河崎を睨みつけた。
「出て行けって、言われたのさ…浩輔に」
「おい、お前、何したんだ? コースケに?」
「フン…昔を思いだせって、身体に聞いてやっただけさ…徹底的に嫌われたわけだ。これで、一巻の終わり」
「達也…」
河崎は藤堂から目を逸らし、鼻で笑ってデスクに戻って行った。
三日ぶりに浩輔が出社すると、直子や保奈美たちが、心配そうにデザインルームにやって来た。
「コースケちゃん、風邪、もう、いいの?」
「うん、平気」
「ナオがさ、看病に行くって言ったら、佐々木ちゃんが俺が行くからいいって言うしさ」
「うん。来てくれたよ。果物とか持って」
実際は、佐々木が来てくれたのに、浩輔がドアを開けなかったので、外に置いてあった。
とても佐々木に会えるような状態ではなかった。
河崎に無理を強要された身体もしばらく使い物にならなかった。
佐々木は直行らしく、今日はまだ顔を見せていない。
でも…わかってた。
やっぱり、佐々木に甘えられるはずないじゃないか。
もう、いいや… しっかりしなけりゃ…
たったひとつわかること――――
きっとこの先、あんなに人を好きになることはもうないに違いない―――――。
ここ数日、河崎と女たちとのスキャンダルが立て続けに週刊誌を騒がせ、SNSでも面白おかしく拡散していた。
何人もの有名女優や人気モデルが登場するので、ワイドショーもおもしろ半分、取り上げている。
当の河崎は夜毎飲み歩き、最後には荒れるため、女たちは藤堂に任せて帰ってしまう、そんな日が続いている。
河崎を追い出したくてたまらない馬場部長は、これ幸いと、河崎を呼んで嫌み交じりに文句を並べ立てた。
「全く、君の母親も、トラブルメーカーだったと聞くが、あの親にしてということかねぇ」
その一言がなければ、河崎も、馬耳東風、そんな行為には及ばなかったかも知れない。
だが、それで、キレた。
上司を殴り倒した河崎は、即日、一週間の謹慎を言い渡された。
ところが、その夜も河崎は街に繰り出し、寄ってきた女の子と飲み歩いていた。
「いいかげんにしろ! 毎度、お前のお守りにつき合わされるこっちの身にもなってみろ」
藤堂は河崎のあまりの体たらくに呆れながらも、性分からと腐れ縁から放り出すこともできないでいた。
「誰が頼んだ!? きさまも帰れ!」
「また乱闘騒ぎでも起こされて、マスコミを喜ばす協力なんざ願い下げだ。第一、天上天下唯我独尊のお手本みてーなお前につき合ってやれる者が、この俺様以外どこにいる?」
藤堂は仕方なく河崎が立ち寄りそうな店に、河崎が現れたら連絡するようにと頼み、連絡があるとすぐ駆けつけた。
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