「…俺、俺こそ、ずっと好きで、河崎さんのことばっか…どうしようもなくてっ…」
おずおずと二人の唇が重なった。
幾度も思いの熱さを高め合う。
浩輔の吐息が艶めいたのを嗅ぎ取ると、河崎は唇を合わせたまま、その場でもどかしげに着ている物を脱がしていく。
身に付けている物を何もかも取り払い、心までも曝け出す。
抱きしめる肌の熱さに、お互いがどれほど必要であるか思い知る。
ぬくもりを与え合い、迸るような熱さを、河崎は浩輔にぶつけた。
浩輔が河崎の導く甘い罠に落ち、やがて声にならない悲鳴を口にするのを楽しみながら、河崎は浩輔の存在全てが欲しいと思う。
この上ない優しい所作で、河崎は浩輔を愛した。
「浩輔…」
耳元で囁く河崎の低く深い声は、浩輔の脳髄まで侵し、蕩かしていく。
やがて浩輔の中に侵入した河崎は幾度となく揺さぶりながら浩輔の声が艶めくまで煽った。
「あ……んん……や……だ……あっ……」
狂うように滾る激流が浩輔の中を絶え間なく駆け回る。
「あ………河崎さ…」
絶え切れずに吐息混じりに上げる声が色めくと、身体は深い劣情に戦慄し、浩輔の唇は閉じることを忘れてひたすら喘ぎを漏らした。
「……浩輔」
もう余裕のなくなった河崎は、甘くすすり泣く浩輔の奥へと突き上げた。
堕ちるなら諸とも。
誰にもやらない、もう、絶対、誰にも。
リビングにある大きな柱時計が時刻を告げている。
窓の向こうには、輝くばかりの夜景が広がっていた。
全てが二年前と同じだった。
生活感のない空気もまた変ってはいない。
いつの間にかチビスケがベッドの端に丸くなっている。
頭が覚醒するにつれて、床の上なのも構わず夢中で抱き合っていたのを思い出し、浩輔は羞恥に赤くなる。
スニーカーも服もどこにあるんだろう。
ベッドに運ばれてすぐに眠ってしまったらしい。
だが、河崎の腕の中でまどろんでいた浩輔は、はたと起き上がった。
「どうした?」
河崎もゆっくり身体を起こす。
「……って、七時? 午後の?」
浩輔は時計の鐘の音を七回数えたのだ。
「ああー! どうしよー、打ち合せ…」
焦る浩輔の横で、河崎はまた寝転んだ。
「んなもの、うっちゃっとけ」
「そうはいきませんよ!」
携帯はリビングのバッグに入っているしと、浩輔はとりあえず枕元にある電話に手を伸ばす。
「俺が代わりに弁明してやろうか? 実は昼間っからエッチしてましてって」
河崎がにやりと笑う。
「…からかわないで下さい!!」
コールする間にも、浩輔は何か言い訳がないかと思い巡らした。
階段からおっこちて怪我をしたとか、貧血を起こしたとか………。
しかし嘘が苦手な浩輔には、うまく言い逃れる自信はない。
「ハイ、ジャスト・エージェンシーでございます」
「あ、あれ、ナオちゃん? 残業……?」
浩輔は恐る恐る声を出す。
「あ、コースケちゃん? 今どこ?」
「え、あ、その…実は…」
話している最中に、河崎が手を伸ばしてくるので、次の言葉が出てこない。
「安心して。あの後すぐ、佐々木ちゃんに『ベリスキー』行ってもらったから」
「え、あの、後?」
浩輔には事態が読めない。
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